既存薬でコロナ対策は可能

訳:河田昌東
21/02/17


(1)SARS-CoV-2 infection is effectively treated and prevented by EIDD-2801
Angela Wahl1 その他25名 (Nature 2021年2月9日号)
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論文要約
最近出現したすべての既知のヒト・コロナウイルスは恐らくコウモリ由来である。ここに我々は、人間の肺を持つマウス(LoM)を使った単一の実験施設を使って、最近出現したすべてのヒト・コロナウイルス(SARS-CoV、MERS-CoVおよびSARS-CoV-2)と、パンデミック前のSARSに似た2つの関連性の強いコウモリ内在のコロナウイルスの試験管内での効率的な複製を実証した。

このモデル実験で使ったウイルスの複製は本物の人間の肺組織で行われたものであり、ウイルスや宿主細胞によるいかなる種類の適応も必要としない。我々の研究結果は、コウモリが人間に直接感染可能なコロナウイルスを体内に宿していることを示している。 パンデミックの原因であるSARS-CoV-2について更なる詳細な分析の結果、LoMの肺胞および繊毛気道細胞に存在するII型肺胞上皮を含むヒト肺上皮細胞へのウイルス感染が最初に起こることが分かった。急性SARS-CoV-2の感染は細胞変異原性が強く、堅牢で持続的なI型インターフェロンと炎症性サイトカインの誘発(ケモカイン反応)を起こす。 最後に、我々はコロナウイルス感染に対する予防戦略としての前曝露と治療について評価を行った。我々の結果は、現在広範囲の経口抗ウイルス薬として使われているEIDD-2801の予防投与により、フェーズII?IIIの臨床試験における生体実験でSARS-CoV-2の複製を劇的に抑制する事が出来た。

したがって、この薬剤はCOVID-19の予防と治療に大きな可能性を秘めている。

訳注:
EIDD-2801は化学名を「モルヌピラビル」と言い、RNAウイルスの遺伝子構成成分の1つであるシトシン(C)のアナログ(類似物質)で、ウイルスの遺伝子複製反応を妨害する。インフルエンザ治療薬として開発された抗ウイルス薬で、経口投与による飲み薬である。ドイツのメルク社はモルヌピラビルについて昨年10月、入院中患者に対する1年間の投与試験開始を表明した。また、アメリカのジョージア州立大学の研究者らはフェレット(イタチの仲間の実験動物)を使った実験で、SARS-CoV-2 に感染したフェレットにEIDD-2801を経口投与すると24時間後には体内からコロナウイルスが検出出来なくなった、という論文をNature Microbiologyに発表している(Therapeutically administered ribonucleoside analogue MK-4482/EIDD-2801 blocks SARS-CoV-2 transmission in ferrets: Nature Microbiology vol. 6, January 2021)。


(2)Review of the Emerging Evidence Demonstrating the Efficacy of Ivermectin in the Prophylaxis and Treatment of COVID-19.
Pierre Kory ら10名(FLCC ALLIANCE: Jan.12,2021)
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論文要旨
 2020年3月、ポールE.マリック教授により新型コロナ救命治療最前線同盟(FLCCC)が設立され、COVID-19の治療プロトコルを開発するために、急速に増加している基礎科学、翻訳、および臨床データについて絶えず検討を行ってきた。最近になり、FLCCCはCOVID-19に対して抗寄生虫薬イベルメクチンが非常に強力な抗ウイルス作用と抗炎症特性を持つ事を発見した。

更に我々はCOVID-19の予防と治療に関し、一貫して繰り返し行われた大規模なランダム臨床試験において病状の改善結果が得られた事を確認した。また、人口全体の健康への影響を示すデータに関して、南米諸国のさまざまな市長や地域の保健当局が、この薬の有効性が証明されることを期待して市民集団に「イベルメクチン配布」キャンペーンを開始したときに発生した、複数の大規模な「自然実験」によってイベルメクチンの有効性を裏付ける新たな証拠が得られた事実を示した。そのようなキャンペーンを行わなかった近隣の地域と比較して、これらの各地域での症例数と致死率の確かな再現性のある経時的減少は、イベルメクチンがコロナパンデミックの世界的な解決策になる可能性がある事を示唆している。これは、ベリーズ、マケドニア、および2億1000万人が住むインド北部のウッタルプラデーシュ州の国家治療ガイドラインに、COVID-19の予防および治療薬としてイベルメクチンが最近組み込まれた事によって更に証明された。

我々の知る限り、現在のレビューは、複数の病期における多数の臨床試験に基づいているため、強力な治療効果を実証するのに十分な臨床データであると言える。 唯一の弱点は、対照試験の論文の半数が査読済みの出版物で公開されているのに対し、残り半分は医学のプレプリントサーバーにアップロードされた原稿を基にしている事である。プレプリントサーバーからの試験データがパンデミック中の治療実践に即座に影響を与えることは現在では日常的に行われているが、この結果採用された治療法が万一物議を醸す可能性を考えると、FLCCCは主要な国内および国際的な医療機関が、これらの研究結果をより速やかに検証し、イベルメクチンがCOVID-19感染の発生率の高い集団に使われた場合に記録された主要で肯定的な疫学的影響に関し、速やかに確認する為に必要なリソースを提供することを宣言する。

訳注:
イベルメクチンは北里大学の大村智教授が1979年に土壌細菌の中から発見し、抗寄生虫薬として永く使われてきた経口薬である。商品名はストロメクトール。この功績により大村教授は2015年にノーベル医学生理学賞を受賞した。論文にも記載されているとおり、イベルメクチンは新型コロナパンデミックが始まってから、スペインやパキスタン、バングラデシュ、アメリカ等10か国15地域で臨床試験が行われた。その結果が別の論文(*)で紹介されている。これらの二つの論文を通して言える事は、イベルメクチンが副作用も少なく、新型コロナ感染による重症化や死亡率を明らかに低下させる、という結果である。イベルメクチンに関しては朝日新聞の「論座」にも最近紹介されている。
https://webronza.asahi.com/science/articles/2021020700003.html?iref=comtop_Opinion_06
論文(*):Ivermectin reduces the risk of death from COVID-19-a rapid review and meta-analysis in support of the recommendation of the Front Line COVID-19 Critical Care Allliance.

(著者:Tess Lawrie、The Evidence-Based Medicine Consultancy Ltd. 2021年1月3日)


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