ヨモギの仲間 Artemisia annua L(日本名:クソニンジン)が
新型コロナ・ウイルスの増殖を抑える 
Artemisia annua L. extracts prevent in vitro replication of SARS-CoV-2
by: M.S.Nair, Y.Huang, D.A.Fidock, S.J.Plyak, J.Wagnoner, M.J.Towler, P.J.Weathers
(コロンビア大学及びワシントン大学の研究者)
掲載:bioRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2021.01.08.425825


訳:河田昌東
21/01/14
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論文要約
 新型コロナは世界中で感染し百万人を超える死者(訳注:2021年1月14日、現在200万人)を出した。現在、レムデシベル以外に認可された治療薬はない。今回、我々は抗マラリア薬のアルテミシニンを作る薬草の Artemisia annua L.(クソニンジン)の抽出物が新型コロナ・ウイルスの増殖を抑える事を発見した。今回、我々は4つの大陸から採取した7検体のクソニンジン乾燥葉の抽出物の抗ウイルス活性を測定した。お湯抽出物に含まれるアルテミシニンと総フラボノイド、及び乾燥葉自体が何れも抗ウイルス活性を示し、IC50(訳注:50%有効濃度)はそれぞれ0.1〜8.7μモル、0.01〜0.14μg、23.4〜57.4μgであった。ある試料は12年以上前に採取された乾燥物だったが活性があった。お湯抽出物が有効だが、アルテミシニンと総フラボノイドの濃度は抽出によっては100倍もばらつきがあり、抗ウイルス作用は濃度が高いほど有効だった。アルテミシニン単独の IC50 はおよそ70μモルで、抗マラリア薬のアルテミシニン加工薬のアルテスネート、アルテシメター、ジヒドロアルエミシニンは何れも新型コロナ・ウイルスには効果がなく、μモル濃度では細胞毒性があった。それに引き換え抗マラリア薬アモヂアキンの新型コロナに対する IC50 は 5.8μモルであった。新型コロナ・ウイルスのスパイク蛋白質を作るように加工した偽ウイルスによるベロE6細胞とカル3細胞に対する感染に対しては、この薬草の効果は小さかった。抗ウイルス作用の IC90(90%効果の濃度)の濃度レベルでもこの薬草抽出物による細胞毒性はなかった。

 これらの結果は、薬草のお湯抽出物中の有効成分はアルテミシニン以外の何か、あるいはウイルス感染後に起こる反応をブロックする何らかの成分とアルテミシニンとの相同作用であることを示唆する。更なる研究が進めばクソニンジンが新型コロナ感染対策にとって低コストの治療薬となるかどうか明らかになるだろう。


訳注(河田昌東)
 ヨモギの仲間の薬草(クソニンジン)は中国原産の漢方薬で抗マラリア薬として使われてきた。日本国内でも九州から北海道までどこにも繁茂している雑草である。新型コロナ感染が広がった昨年4月、アフリカ、マダガスカルのラジョリナ大統領は同国の研究者らによれば薬草クソニンジンが有効で、学校などで薬草茶を配布すると声明を出したが世界的には無視され、一部には笑いものにもなった。しかし、クソニンジンが抗マラリア薬アルテミシニンの原料であることは既成事実であることから、WHOは昨年6月にこの薬草による新型コロナの効果に関する研究を認可した。今回の論文はその一部である。現に、新型コロナが猛威をふるっている南アフリカで、マダガスカルの感染者は極めて少数で現在感染爆発は起こっていない。


参考HP:クソニンジン(Artemia annua)