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GABAトマトの安全性について
このGABAトマトは、筑波大学の江面浩教授らが開発したものである。江面教授はこのトマトの発売元であるサナテックシード社の取締役最高技術責任者でもある。血圧降下作用のあるGABA(γ−アミノ酪酸)はトマトの青い状態の時には高濃度に含まれているが、熟してくるにつれて分解酵素が働き濃度が低下する。江面教授らはゲノム編集酵素CRISPR Cas9を使ってこの分解酵素の遺伝子を破壊し、熟してもGABA濃度が低下しないように改変した。江面教授らの論文によれば 、このゲノム編集の際には細菌由来のCas9遺伝子の他に抗生物質カナマイシン耐性遺伝子とカリフラワーの病原ウイルスであるカリフラワー・モザイク・ウイルスのCaMV遺伝子を同時にトマトの細胞に注入し、細胞の遺伝子の一部に取り込ませている。ゲノム編集が成功した細胞の選別を目的に、100mg/Lという高濃度のカナマイシンを培養液に入れてゲノム編集細胞を増殖させている。したがって、このGABAトマトの遺伝子には当然Cas9遺伝子とカナマイシン耐性遺伝子、CaMV遺伝子が組み込まれている。これらはいわゆる外来遺伝子であり、本来なら遺伝子組換え作物と同様に食品安全委員会の安全審査を受けなければならない。
ゲノム編集食品に関する法規制では「届け出だけでOK」となるのは外来遺伝子が含まれないものに限る、とされている。しかし江面教授らの論文や、この度、サナテックシード社から厚生労働省に提出された説明書類には「外来遺伝子の削除やその根拠データ」については一切述べられていない。
このままゲノム編集GABAトマトが市場に流通し、消費者が食べるとどうなるか。現在、アメリカはじめ日本でも抗生物質耐性菌の蔓延による大量の患者の死亡が大きな問題になっている。遺伝子組換え大豆やトウモロコシ、ナタネ等に含まれる抗生物質耐性遺伝子が、体内の腸内細菌に乗り移る「遺伝子の水平伝達」が一因、と指摘されている。ゲノム編集GABAトマトが一般家庭の食卓に上がれば、この被害はさらに大きくなり、消費者の健康が脅かされることになる。
Efficient increase of γ-aminobutyric acid(GABA) content in tomato fruits by targeted mutagenesis: Satoko Nonaka, Chikako Arai, Mariko Takayama, Chiaki Matsukura and Hiroshi Ezura. Scientific Reports 7:7057 DOI:10.1038/s41598-017-06400-γ Published online; 01 August 2017.
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「届け出認可」の欺瞞
この度GABAトマトの「届け出」認可にあたっては、厚生労働省薬事・食品衛生審議会による「事前相談」が行われた(2020年12月11日)。この会合は非公開の秘密会合で、どのような議論があったかが全く分からない。この事前相談会に提出された資料に基づき、審議会はゲノム編集GABAトマトについて「外来遺伝子が含まれず安全審査は不要」との結論を出した。この事前相談会が事実上の安全審査を行ったのである。しかし前述のように、厚生労働省が公開した企業からの提出資料にはどこにも外来遺伝子に関する記載がなく、もちろん除去したという証拠も示されていない。事前相談会は根拠もなく外来遺伝子が含まれない、と断定したのか。もし資料が提出されたなら公開すべきである。口頭での説明があったかもしれないが非公開であり、第三者がそれを検証することは出来ない。こうした「事前相談会」なる曖昧な会議が、ゲノム編集食品の事実上の安全審査を行うことになるのは極めて危険である。こうした認定制度は早急に廃止し、遺伝子組換え食品同様の安全審査を義務付けるべきである。ちなみにEU加盟国ではゲノム編集食品も遺伝子組換え食品同様に安全審査と表示を義務付けている。
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サナテックシード社の販売戦略の問題
事前相談会が届け出OKとの結論を出した同じ日に、サナテックシード社は厚生労働省に届け出を行い厚生労働省は「届け出を受理」した。この同じ日に、同社はホームページ上にゲノム編集GABAトマトの市場流通について広報した。それによると、当面トマト自体を市場には出さず、ゲノム編集GABAトマトの苗を家庭菜園用に自分で栽培して食べることを認めた者だけに無料配布するという。その際、応募者に対して厳しい審査を行い、同意書を提出させて同社のオンライングループに入会した者だけに苗を送る。当然、ゲノム編集GABAトマトを食べた結果についても、血圧が下がったかどうか等の質問があるはずで、これは事実上の人体実験である。本来、食品の安全性については動物実験や成分分析などの安全性に関する検証が事前に必要であるにもかかわらず、ゲノム編集は突然変異と同じだ、という詭弁がこうした異常な流通システムを生み出した。
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| 我々は消費者に対し、こうした異常な、かつ安全性が証明されていない農産物の流通に関与しないように強く提言する。 |
以上 | 2020年12月15日 |
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呼びかけ団体 |
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遺伝子組換え食品を考える中部の会
代表 河田昌東
事務局:食と環境の未来ネット
〒461-0004
名古屋市東区葵1-14-3
TEL:052-937-4817
FAX:052-932-8234
E/mail:nonchan-milk@athena.ocn.ne.jp
http://gm-chubu.sakura.ne.jp/ |
● 賛同団体(2021/02/23 23:00 現在) 86の団体・個人
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・ | 遺伝子組換え食品を考える中部の会 | 遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン |
| 特定非営利活動法人日本消費者連盟 | 食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク |
| バイオダイバーシティ・インフォメーション・ボックス | 食政策センター・ビジョン21 |
| 名古屋の給食をオーガニックにする会 | 世界女性会議岡山連絡会 |
| 顔のみえる店 FAIR TRADE 風"s | 母なる地球を守ろう研究所 |
| (株)愛農流通センター | 虔十の会 |
| 食と環境の未来ネット | 一般社団法人心土不二 |
| 漬物本舗 道長 | 岐阜ゆうきネット |
| NPO法人メダカのがっこう | 生命の輪 |
| 空知の給食を考える会 | 種をつなげる種でつながる 佐久地方 |
| 国際有機農業映画祭 | 種子ネット |
| なのはな生活協同組合 | イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク |
| 母の愛 | 土こやしの会 |
| スフィーダ | Pee Wee Academy |
| 有限会社 くらしを耕す会 | 特定非営利活動法人 有機農業推進協会 |
| 個 人 | 安全な食べものネットワーク オルター |
| 食べもの変えたいママプロジェクト@みやぎ | ラムサール・ネットワーク日本 |
| 豊橋有機農業の会 | 公益社団法人全国愛農会 |
| ナチュラルスタイル 岐阜支部 | 安全食品連絡会 |
| 水源の里を守ろう 木曽川流域みん・みんの会 | 食と農を守る会 |
| 生活協同組合連合会アイチョイス | あいち生活協同組合 |
| 一宮生活協同組合 | 生活協同組合ぷちとまと |
| 食と農と命を考える会・雫石 | 生活協同組合連合会コープ自然派事業連合 |
| 飯能市消費者団体連絡会 | NPO 日本有機農業研究会 |
| 北アルプスいのちと食の会 | 生活協同組合コープ自然派兵庫 |
| NPO法人ふじのくに学校給食を考える会 | だらっと憲法カフェ |
| 特非営利活動法人兵庫県有機農業研究会HOAS | 特定非営利活動法人鹿児島県有機農業協会 |
| 日本消費者連盟関西グループ | 日本の種子(たね)を守る会 |
| 民家カフェ「風の庭」 | NPO法人あしたを拓く有機農業塾 |
| i 知 安心生活 | ゲノム問題検討会議 |
| オーガニック名古屋市政の会 | ポノポノ |
| 子どもの食・農を守る会伊那谷 | なごや国際オーガニック映画祭実行委員会 |
| DNA問題研究会 | オーガ二ック雫石 |
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子どもたちのために食の安全を考える会・埼玉
(通称:コトショク、子と食) | 自由と人権 |
| 現代医療を考える会 | 常総生活協同組合 |
| 〈ノーモア南京〉名古屋の会 | エントロピー学会・名古屋懇談会 |
| NPO法人ファミリア | 株式会社 渥美フーズ |
| 特定非営利活動法人 熊本県有機農業研究会 | 食と農を考える徳島ネット |
| 地域から平和を考える会 | 豊川有機農業の会 |
| デトックス・プロジェクト・ジャパン | 食べもの変えたいママプロジェクト(MomsAcrossJapan) |
| 子どものみらいを守る会 | 食と農・環境を考える四国ネット |
| 生活協同組合パルシステム山梨 | しりべしなんでも百姓くらぶ |
| くまもとのタネと食を守る会 | 種の未来2021種苗交換会の参加者一同 |
| 子どもの未来を守る会さくらがわ |
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