遺伝子組換え食品を考える中部の会では2020年10月4日、三重県の国道23号、川越町川越インターから松阪市の製油会社周辺、中勢バイパス嬉野新屋庄ランプから鈴鹿市野町の同バイパス終点までの区間で、セイヨウナタネ自生調査を行った。

今回も、新型コロナウィルスの影響を考慮し、各班の車両に運転手、記録係、目視確認係の3名という最小編成での調査とした。

問題となっていた、中勢バイパスでのナタネ自生は、嬉野新屋庄町嬉野ランプ付近と津市北河路町サオリーナ付近で各1個体を目視確認するにとどまった。
中勢バイパス、松阪市嬉野新屋庄ランプ付近に自生するセイヨウナタネ
今回の調査で抜取り採取したナタネ約110本のうち45本(雑種4本を含む)に試験紙による簡易検査を行った。

その結果、セイヨウナタネでは、41本中36本が遺伝子組換えと判明(RR耐性11本、LL耐性25本)。GM率は87.8%。さらに雑種と見られる4本については、3本がバスタ耐性GMであることが判明(GM率75%)。形態からハタザオガラシなどの雑種とは違い、ブロッコリーやダイコン、カブなどとの雑種の可能性がある。

当日の結果
B3-Z(LL+)
『中別保』の南
B12-Z(LL+)
『一色』ファミリーマート
B13-Z(GM陰性)
『一色』ファミリーマート
C3-1Z(LL+)
松坂木質バイオマス熱利用協同組合の前
 いずれも雑種と見られる4個体
B班で採種された写真左3個体はブロッコリー様で、肉厚の葉は極細の毛に覆われており水をはじく。
C3−1Zはカブまたはダイコン様で、葉は肉薄、極細の毛は少ない。

農民連食品分析センターにこれら4検体のPCR検査を依頼中。現在、中部の会で栽培試験中。
本物のブロッコリー
今夏の猛暑の影響もあってか、今回の調査で、車中より確認できたナタネの数はかなり少なかった。

ナタネの自生が少ない理由としてもうひとつ考えられるのが、四日市港でのトラックへのナタネ積込みのピットに新設された強力エアーシャワー装置(2019年12月より稼動)による効果である。この装置は製油会社の努力で設置されたもので、大きな期待がかけられている。
今のところ断定はできないが、その効果の是非は来春のナタネ自生調査に委ねたいと考える。

今回の調査で、製油会社周辺で雑種とみられる1個体を含め、多数のセイヨウナタネの自生が確認された。これは、製油会社でナタネを荷下ろし後、トラックに付着したナタネがこぼれ落ちるのが原因と思われる。そのため、製油会社に対し、荷下ろしピットにも、エアーシャワーの設置や飛散防止を申し入れた。が、今のところ、その対策はとられていない模様である。

また、今回の調査で、中勢バイパスでも2本のセイヨウナタネを目視確認した。製油会社はすでに中勢バイパスを使用しない旨の確約をしており、これらの自生が過去に零れ落ちたナタネによるものか、当分の間追跡調査する必要がある。

C3-1Zの自生の様子

B1『千里団地入口』付近

B2 田中橋の北

B3〜B11『中別保』の南

B12-Z、B13-Z『一色』

C1 西肥留町
各検体の自生の様子

環境省と農水省の調査について
環境省
環境省は相変わらず毎年GMナタネの自生が広がる可能性を否定する報告を出し続けている。三重県では、自生は港から製油工場までの40km余の全域に広がっているにも関わらず、国による調査区域は非常に限られたものとなっている。

環境省は相変わらず毎年GMナタネの自生が広がる可能性を否定する報告を出し続けている。同省では、主要3河川の河川敷とその周辺わずか約1kmずつしか調査していない。さらに同省の調査の前後、市民団体がGMナタネを抜取っている為、世代交代していない事は明白で、このことを知りながら、「自生が広がることはない」と結論付けているのは非科学的といわざるを得ない。

環境省の調査報告(バイオセーフティクリアリングハウス)

農水省
農水省にいたっては、輸入港のナタネ荷上地点から半径5kmの範囲のみの調査となっている。これは関連企業が、もっとも重点的にセイヨウナタネの駆除・清掃活動を行なっているエリアである。その調査結果が「自生拡大なし」という結論に行き着くのは当然で、その調査には意義が認められない。

農水省の調査報告
また、国は製油会社にこぼれ落ち防止対策をするよう行政指導すべき所、これを怠っている。それに対し、市民団体が製油会社と地道な信頼関係を築き、協力してこぼれ落ち防止対策を進めてきた。近年GMナタネの自生数が減ってきているのはその成果であり、「自生が広がることはない」と言うのはまさしく暴論である。

遺伝子組換え作物に加え、今後、ゲノム編集作物も輸入に加われば、市民による調査・駆除活動はさらに難航することが予想される。

現在、ゲノム編集食品については「届出(任意)」のみでその認証制度がないというのが実情である。これでは、有機食品に混入していてもまったく見分けがつかないことになってしまう。

届出が『任意』であるのに加え、何らかの問題が発生した場合、責任の所在はあくまでも『届出者』となっている点も大きな問題である。

われわれ消費者にとって、選ぶという権利は当然のこととして存在するはずである。「届出」は任意であってはならず、『必須』でなければならない。


高木仁三郎市民科学基金
中部の会では今年度、高木仁三郎市民科学基金からの助成を得て活動しています。検査用試験紙をはじめ、GMナタネの調査活動に大きな助力となっています。

高木仁三郎市民科学基金に対し謝辞を申し上げます。