その2

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なお、前回に引き続き、今回も環境省との連携による『隠れGM個体』についての調査を予定していましたが、環境省指定のラウンドアップ耐性GM判定用の NEOGEN 社製試験紙に不具合があったため、適正な検査を期待することができませんでした。そのため、今回は環境省への検体の提出をあきらめることとしました。

なお、今回採取された雑種とみられる7検体について、京都学園大学バイオ環境学部教授・金川貴博氏にPCR検査とDNA配列の判読をお願いしています。

今のところ、中部の会で確認している雑種とみられるナタネについて、その両親の特定については、あくまでも推測によるものです。雑種と見られる個体の周辺で、ハタザオガラシと思われる個体が確認されることが多というのがその根拠です。ただし、ハタザオガラシと類似して、イヌカキネガラシなどの雑草の可能性もあることから、一概にハタザオガラシとの雑種と断定することはできません。

簡易検査で、頻繁にGM陽性の反応が出ていることから、その個体がセイヨウナタネの遺伝子を持っていることは確実ですが、仮に雑種であるならば、もう一方の片親を確定するためには、染色体数の確認なども行う必要があります。そのためには、根冠細胞など、細胞分裂の盛んな成長点が失われていないサンプルがまずは必要であり、現場で採取するサンプルでは不十分です。種子を発芽させるなどの方法も考えられますが、受粉した花粉の親がサンプル自体のそれと異なる可能性もあります。交雑の両親を確定する方法は非常に難しいといわざるを得ません。

今回、金川貴博教授に依頼するDNA配列の判読では、セイヨウナタネではないという確定ができるという期待があります。

画像で示した、A5-2、A7-2、F12-1、F12-3、F13-1、F16、F34 の7個体はいずれも雑種と思われ、これらを金川教授に検査依頼しています。

なお、これらの個体については、農民連食品分析センターでもPCR検査をしていただきました。いずれも、中部の会での試験紙による簡易検査と同じ結果が得られました。

この場を借りて、農民連食品分析センターさんと京都学園大学・金川貴博教授に御礼申し上げます。
雑種と思われる個体の特徴
セイヨウナタネと形体が異なる
一代雑種の特徴として、不稔の種鞘が目立つ
近くにハタザオガラシと思われる個体が見つかることが多い


A5-2(RR+/LL-)

A7-2(RR-/LL-))

F12-1(RR-/LL+)

F12-3(RR-/LL+)

F13-1(RR+/LL-)

F16(RR+/LL-)

F34(RR+/LL-)
下の画像は、それぞれイヌカキネガラシとハタザオガラシですが、その差異は明確ではありません。
文献によれば、いずれも欧州原産の日本帰化植物。

イヌカキネガラシ
Sisymbrium orientale Linn
物臭狸の花日記 にリンクさせていただきました

ハタザオガラシ
Sisymbrium altissimum Linn
前回の抜取隊で撮影
イヌカキネガラシ
高さ 25〜100cm。茎は直立し、分岐しにくい。全体に軟毛が散生し、とくに茎の下部に目立つ。葉は互生。がく片は有毛。

ハタザオガラシ
高さ 25〜100cm。イヌカキネガラシに比べ、下方の葉は羽状の裂片が5〜10対以上あり、上方の葉も羽状に裂け、がく片は無毛で外側の2枚に角のような突起があることで見分けられる。茎はよく分岐する。

これだけで比較すると、見分けは容易に思えますが、並べて比べないと判りにくい。またやはり欧州からの帰化で、よく似たカキネガラシなどもあります。

現時点では、今回の7検体のような、中部の会で確認されているセイヨウナタネとは異形のナタネが、まずは、雑種かどうかを判定することが先決と思われます。