講演会
09/02/22
日 時:2009/2/22
場 所:名古屋市教育館

講 演:
 第一部
 演 題
河田昌東 氏/四日市大学
カレーライスの食材に放射線照射!?
 第二部
 演 題
小出裕章 氏/京都大学原子炉実験所
六ヶ所村再処理工場とわたしたちの未来
〜静かに広がる放射能汚染〜

遺伝子組み換え食品を考える中部の会主催で講演会『台所にしのびよる放射能』をおこないました。中部の会の河田昌東氏と京都大学原子炉研究所小出裕章氏の講演。170名以上の参加者があり、関心の深さがうかがえました。

今日本ではスパイスの殺菌に放射線照射を認可しようという動きがあります。今回の講演では原子力、放射線について正しい知識、現実を理解しようという内容になっています。

2000年全日本スパイス協会が厚生省(現厚生労働省)に94品目のスパイス類について、放射線照射の法的許可を求める要望をだしました(その1品目はその後削除されたそうですが、どの品目かは不明)。1972年以来日本で唯一照射がおこなわれているのがジャガイモで、北海道士幌町農協でその一部(年間4万tのうち約8千t)に芽止めの目的で照射がおこなわれています。

通常、食品への放射線照射量はそれぞれ@害虫駆除で1kGy(キログレイ)、A病原菌の殺菌で10kGy、B完全殺菌で30kGy以下と規定されているようです。しかしながらこの数値はかなり強烈ななものです。

1999年、茨城県東海村の旧動燃で起きた臨界事故では作業員2名が16〜20Gy(グレイ)の被曝で悲惨な死をとげましたが、害虫駆除のための1kGyはその約50倍に相当します。もちろんヒトがその量の放射線を浴びたとすれば即死します。核爆発時の爆心での被曝量にも匹敵するとのこと。



小出氏(左)と河田氏

申請中の品目のうち、よくみるとタマネギ、ニンジン、ネギ、ゆず、ミョウガなどもありますが、乾燥、粉砕など形態に規定はありません。もちろん生も。

照射によってなにが変わるか
肉、魚など、脂肪を多く含む食品に照射をした場合、シクロブタノンという発がん性の疑われる特有の脂肪酸分解物ができる。この物質を検出することで放射線照射の有無を検査することができるそうですが、脂肪分の少ないものでは検出が難しいとされています。そのほか照射によりビタミンCやB1、Eなどが破壊されることがわかっています。放射性物質が残留することはありません。

北海道士幌町農協の照射施設。コバルト60の発するガンマ線が中央部分から照射される
もちろん放射性物質を直接体内に取り込むわけではないため、被曝による被害はないものの、放射線による変異物質による影響については問題なしとは言い切れません。

原子力エネルギーについて
原発1基で年間100万kwの電力を生むとします。国の振れ込みでは原発はクリーンで『発電時に(あくまでも)』二酸化炭素を発生しない。しかし、そのためには30tの濃縮ウランが必要で、そのためには13万tのウラン鉱石を掘り出さなくてはならない。採掘時の残土は240万t。精錬時に低レベル核廃棄物13万t。さらに濃縮・加工のために160tの低レベル廃棄物が発生します。そして発電時に死の灰を大量に含む使用済み核燃料30tが発生。そして経年で廃炉というわけですがこれもまた膨大な核廃棄物。
ここで使用済み核燃料を再処理してプルトニウムというさらに厄介な毒物を取り出そうという計画も。それを核兵器に使わない代わりに高速増殖炉という夢の施設で燃やすことで、さらに多くのプルトニウムを得ることができるのかもしれない。あるいはいっそのこと原発でいっしょに燃やそうという発想(プルサーマル)もありその作業がおこなわれようとしています。しかしながらそのために想像を超える膨大な費用がかかる。はっきりいって再利用せずに核廃棄物として処理したほうがずっと経済的といえる。

低レベル核廃棄物の処理には最低300年間の保管が。さらに高レベルには100万年の間の保管が必要とされている。実際にその期間、たとえば300年でさえできるかどうかわかりません。それを100万年もできるはずがありません。

原発1基で1年間に広島型原爆1000発分のプルトニウムを発生するといわれています。問題になっている六ヶ所村で処理されるかもしれない量のプルトニウムは1年間にその約27倍、広島型原発でなんと27000発分になってしまいます。これだけの核のゴミを毎年毎年処理(正確には廃棄)し続けることの意義は皆無といって過言ではありません。

おまけに原発という施設を動かすためには、以上のような厄介な作業を安全マニュアルのとおりにおこなわなければならないという条件があります。でも、取り返しの付かない事故は人間の不完全な理性のおかげで必ず起きてしまうものだということを忘れてはいけません。

現在、原子力を平和利用するという施策には、一般的にも多くの問題点が指摘、認識されるようになってきています。
食品に放射線を照射するということ
人間が原子力を、放射線を扱うことの意味を今一度考える必要があります。その行為のためには、理性が最優先されなければならないということを知るべきです。医療など、仕方のない場合をのぞいて、必要のない用途に、しかも危険や不安を抱えたままの利用はおこなうべきではありません。食品の信頼を基盤とした安全流通のために、放射線照射はおこなうべきではありません。

またさらに、食品に対し日常的に放射線を利用することが人々の原子力に対する認識の甘さにつながり、それが原発や核兵器を許してしまうような気運ともなりかねません。核施設を建設することで利益を得る一部の企業や団体のためにすすめられているといっても過言ではない原子力行政に大きな疑問を感じます。

まずは私たちの台所から、学校でのこどもたちの給食から考えてゆくことが大切ではないでしょうか。

●今回の企画に賛同いただいた団体・個人のみなさま    (あいうえお順)
あいち生活協同組合、あいち生活協同組合協力会、あいち生活協同組合生産研究会、遺伝子組み換え情報室、音羽米研究会、カクトウ醸造、核のごみキャンペーン・中部、神谷製菓、くらしを耕す会、こだわり農場鈴木、自治労名古屋学校支部、食と環境の未来ネット・中部よつ葉会、角谷文次郎商店、土こやしの会、東海民衆センター、豊橋有機農業の会、名古屋生活クラブ、西三河生協、麸屋藤商店、道 長、わっぱの会、ラブリー アースJapan、流域自給を作る大豆畑トラスト石黒道子、井上弓子、内田温子、岡村佳代子、加藤千眞子、株本典子、木山純子、高橋智津子、竹内康子、村上喜久子、村埜紀子、野間とし子、服部裕子、山越美由紀、吉川和子、和田典子、
ご協力ありがとうございました