四日市港とその周辺の GMナタネ自生調査報告(その5)
遺伝子組換え食品を考える中部の会
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(2006年2月16日)
2006年2月9日、遺伝子組み換え食品を考える中部の会(以下中部の会と略す)では、三重県四日市港第二埠頭から津市嬉野町の製油会社に至る国道23号沿線のセイヨウナタネ自生調査を行なった。今回で通算10回目となる四日市港周辺の調査には、中部の会参画団体メンバーとカナダのブリティッシュ・コロンビア大学から日本のGM政策の実態を調査するために来日中のイブ・ティベルギアン博士を含め、14名の参加者があった。 中部の会では、今まで製油会社や四日市市、三重県などに対し、セイヨウナタネのこぼれ落ちによる野生への拡散及び栽培野菜種への交雑を防ぐべく折衝を行なってきた。したがって今回の追跡調査は、それらの活動の意義・効果を探る意味でも重要な意味を持つものである。 今回の調査では四日市港から津市までの距離が40Km以上に渡ることから、精度の高い調査結果が得られるよう、全体を4つのグループに分けて行なった。第1グループは四日市港第二埠頭とその周辺、第2グループは国道23号『西末広町』交差点より西行き、第3グループは近鉄白子駅南『堀切橋南サークルK』より国道23号西行き、第4グループは三重大学付近『新江戸橋』手前ファミリーマートより国道23号西行き、『小舟江町北』交差点を経て製油会社までとした。 各グループの調査結果 第1グループ(採取検体数:11) 港内での調査では、セイヨウナタネの自生を確認したが、我々の以前の調査とくらべると頻度は少なかった。これは埠頭関係者による清掃活動の結果とみられる。しかしながら、埠頭を出て国道164号から国道23号に至る沿道では、あいかわらずセイヨウナタネの自生が見られる。これらの中には、過去に地上部だけを刈り取ったと思われる株の根元から、新たに新芽が出て大株になっているものも多かった。駆除に当たっては、地上部の刈り取りだけでなく、根から引き抜くことが大切である。開花結実しているものも1検体あった。採取した検体は11。内6検体が除草剤ラウンドアップ耐性遺伝子組み換えナタネ(以後RRナタネと略す)で、組み換え(GM)である確率は55%であった。 第2グループ(採取検体数:9) 第2グループからはすべて国道23号沿線での調査となる。春になるとセイヨウカラシナが咲き乱れる内部川(鈴鹿川支流)の河川敷だが、多数のセイヨウカラシナがすでに発芽し、10〜30cm程度に成長しているが、まだ開花はない。多くのセイヨウカラシナに混ざり、2株の小さなセイヨウナタネを確認したがいずれも非GMであった。 国道23号線は交通量が多く、車からセイヨウナタネを確認、採取するのに危険を伴うため、要所に停車しての調査となった。先回までの調査で大きな群落と、その世代交代を確認していた『林崎町』付近の田の畦では、セイヨウナタネは今回きれいに一掃されていた。状況から判断して、地権者または他の関係者により、ラウンドアップ以外の除草剤による駆除が行われたと思われる。さらに23号線を南下した『肥田町』の田圃横の空き地では、新たに今まで未確認だったセイヨウナタネの大株(根元で6cm直径。非GM)のほか、10〜20cmに成長した5株のセイヨウナタネを採取。うち2株がRRナタネであった。この地点は林崎町の田の畦同様に田圃に隣接しており、水分と栄養分が十分である状況から新たな群落になる可能性がある。この場所の20mほど先には地元の住民の畑があり、セイヨウナタネと交配可能なコマツナとキャベツが栽培されており、開花期が重なれば交雑による雑種形成の危険がある。 以上のほか『寺家5』信号東、同中央分離帯でもセイヨウナタネを確認した。第2グループの調査では9検体中3検体がRRナタネで、GMの確率は33%。 第3グループ(採取検体数:4) 第3グループでも多くのセイヨウナタネを確認した。調査区域は白子駅西『堀切橋』南より、志登茂川新江戸橋手前まで。調査の起点付近の『磯山4』信号付近にて採取の3検体はいずれもRRナタネであった。以降の沿道でも、『堀切橋北詰』信号南、千里駅西『上野北』信号東の各中央分離帯で自生確認。河芸町『中瀬』信号南中央分離帯ではRRナタネを採取。その他、栗真小川町逆川神社付近(大株のナタネ)、『栗真中山町』信号付近、三重大学信号南中央分離帯などでも自生を確認した。 採取できたのは4検体であったが、検査の結果そのすべてがRRナタネだった。採取以外に車中より確認したのは7箇所である。 第4グループ(採取検体数:34) 第4グループは三重大学南新江戸橋の北より製油会社への行程を調査した。津市街での国道23号線沿線は除草が徹底されており、ナタネの確認はできなかった。ただし市街地を外れ、相川橋、『高茶屋小森』交差点付近より南下する国道23号沿いでは、多くのセイヨウナタネを確認、採取することとなった。 結果、製油会社へ右折する『小舟江北』交差点までの国道23号沿いでは、10地点でセイヨウナタネを採取した。内2地点でRRナタネ、4地点でLL(リバティーリンク:除草剤バスタ耐性)ナタネを確認した。 国道23号線を外れ製油会社までの間では、『小舟江北』交差点角のスーパー『オークワ』付近、JR紀勢本線踏切付近の4地点でセイヨウナタネを採取。そのすべてでRRナタネを検出した。スーパー『オークワ』付近のRRナタネは昨年の調査でも確認されている。交差点付近のため車の振動による新たなこぼれ落ちによるものか、あるいは昨年の自生による世代交代によるものかは不明であるが、要注意の場所である。 第4グループの調査では、17地点のうち10地点でGMナタネが確認された。その確率は単純計算で59%となる。 以上、全グループで検査した総検体数は合計41地点で58検体、内23地点でGMナタネを確認した。その確率は56%ということになる。ただし、この数値は採取したすべての検体を、1検体づつ検査した結果によるものではないことを明記しておく。 今回の調査で明らかになったこと 2004年7月、農水省により、茨城県鹿島港周辺でのこぼれ落ちによる遺伝子組み換えナタネの自生の事実が報じられたことを受け、全国のナタネ輸入港でも同様の事実を確認するとともに、多くの地元団体による自主調査とGMナタネの拡散を防ぐための運動が展開されてきた。その結果、千葉港周辺ではその効果が現れ、こぼれ落ちによるセイヨウナタネが減少しているとの報告があった。しかしながら、最近公表された2005年5月の環境省による調査では、こぼれ落ちたGMナタネが世代交代して相当数が定着していることも確認されている。 今回の我々中部の会による自主調査の結果からも明らかなように、三重県四日市港周辺においては、依然としてGMナタネの減少の兆しは見受けられないのは残念なことである。今後の対策として国道23号線は交通量が非常に多く、我々民間団体の力ではこぼれ落ち自生のナタネの撤去作業は困難である。過去にこぼれ落ちた無数のGMナタネの種子からの世代交代、また輸送トラックからのこぼれ落ちが日常的に続いていく限り、自生ナタネの駆除作業は永続的に行なわなくてはならず、そのために費やされる労力は計り知れないであろう。 今後の抜本的な対策としては、行政が製油メーカーに対しこぼれ落ちを止めるべく、輸送用のトラックの構造自体を見直すよう指導し、国土交通省、道路公団等とも連携を図り、徹底した除草作業を継続して行う以外、『こぼれ落ち』問題を解決する最適な方法はありえないものと確信する。 |
■第1グループの調査結果 ■第2グループの調査結果 ■第3グループの調査結果 ■第4グループの調査結果 |
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