四日市港とその周辺の
GMナタネ自生調査報告(その4)
遺伝子組換え食品を考える中部の会

港外での世代交代を確認、自生が続く国道23号線

(2005年7月27日)
はじめに
 我々が四日市港とその周辺の遺伝子組換えナタネの自生調査を始めてから1年が経過した。その間国内の他のナタネ輸入港での自生も確認され、遺伝子組換えナタネ自生問題はカラシナなど国内野生種と白菜、ミズナなど国内栽培種への遺伝子汚染の危険をどう防ぐかが当面の焦点となっている。四日市港自生問題については、7月15日、四日市市農水振興課、三重県商工部、環境森林部、四日市港管理組合、製油会社などの担当者と四日市市民らが対策のための話し合いをもち、意見を交換するなどの動きがあった。基本的には外部への組換えナタネの拡散を放置できないこと、それぞれの立場で出来ることをやること、今後も随時会合を持つことなどが合意された。この会合の中で製油会社側から4月以降スタッフが国道23号線については、自生西洋ナタネの駆除を始めたことが明らかにされた。

 そうした動きを受け、我々は7月17日に改めて四日市港と国道23号線沿いの区間を調査した。その結果を報告する。

(1)四日市港内の自生ナタネ
 基本的には1年前と状況は変わっていなかった。港内には各所で西洋ナタネの開花苗が見られ、最近のこぼれ落ちと見られる発芽直後の小苗も多数観察された。この事実は、再三にわたって新聞やTVで報道されたにもかかわらず、港の構内の駆除は行われていないこと、サイロ業者や運搬業者のこぼれ落ちに対する対策も不十分のままであることをうかがわせるものであった。サイロから運搬トラックへの積み込みでは周辺にこぼれ落ちる菜種を狙って鳩が群れ、啄ばんでいる様子が繰り返されていた。こうした不注意が続く限り、港外への拡散は防ぎようがないことは明らかである。関係者の猛省を促したい。

(2)国道164号線
 四日市港から国道23号線にいたる途中の国道164号線は、短いながら四日市港と外部をつなぐ重要な道路である。道路両脇には企業事務所や倉庫、民家などが建ち並んでいる。街路樹も整備され、一見きれいな町並みである。しかし、この道路沿いには1年前と同様、時期外れの西洋ナタネが街路樹の脇に自生、開花し、あるものは結実している。また、ここを通る精油所へのトラックからこぼれ落ちたばかりのナタネ種子を、沢山の鳩が群がって啄ばんでいる光景も1年前と同じである。この道路沿いの西洋ナタネは採取した4箇所のうち3箇所のものがラウンドアップ耐性であった。また、国道164号線から国道23号線への連結部の交差点空き地には、無数の西洋ナタネの小苗が自生しており、これらもラウンドアップ耐性が確認された。交差点などでの運搬トラックの振動によるナタネ種子のこぼれ落ちが改めて確認された。

(3)国道23号線
 四日市港から南に約50Kmはなれた製油工場にいたる国道23号線沿線は、道路わきの土手や中央分離帯に相変わらず無数の西洋ナタネが開花結実し、あるいはこぼれ落ちたばかりと見られる小苗が自生していた。この中にはその場所での世代交代を思わせる自生も観察された。四日市コンビナートへ出入りする絶え間ないトラックやタンクローリー、コンテナー車などの吐き出す排気ガスの黒い煙にまみれ、薄黒く汚れながらも可憐な黄色い花を咲かせる除草剤耐性ナタネは、たくましいというほかない。製油会社による除草は現在のところ効果を上げていないといえる。

(4)除草剤耐性ナタネの世代交代を確認
 これまでも述べた、国道23号線沿いの鈴鹿市林崎町の田の畦の巨大な除草剤耐性西洋ナタネは、ほとんどが引きぬかれ、あるいは枯死していた。しかし、その周りには無数の発芽したばかりの除草剤耐性西洋ナタネが観察され、この場所での遺伝子組換え西洋ナタネの世代交代による自生は決定的となった。一過性のこぼれ落ちによる自生の段階はすでに過去のものとなったといえる。こうした状況は国内の各地で起こっている可能性があり、国内アブラナ科作物への遺伝子汚染拡散の拠点になる恐れがある。田の畦などの除草剤による雑草駆除は除草剤耐性ナタネを優先種にしているかもしれない。

(5)内部川河川敷の状況
 四日市市南部塩浜地区の内部川河川敷は、今回の調査では全ての野生カラシナが開花後枯死しており、西洋ナタネの自生も確認できなかった。この川にかかる橋の前後の国道23号線沿いには、道路肩や中央分離帯に多数の西洋カラシナの自生が観察されたことから、この河川敷に自生が見られなかったことは、たまたまこぼれ落ちが少なかったからか、あるいは引抜など人為的要因によるものか、不明である。5月28日にはラウンドアップ耐性ナタネの自生が複数確認されており、今後も推移を見守る必要がある。

以上
(文責:河田昌東)


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