四日市港とその周辺の
GMナタネ自生調査報告(その2)

GMナタネは港から深く侵入、国内栽培種との交配が現実的脅威に

遺伝子組換え食品を考える中部の会
(2005年3月18日)

はじめに
 我々は昨年7月以来4回にわたって三重県四日市港とその周辺のGMナタネ自生調査を行ってきた。その結果の一部はすでに報告したように、四日市港の第2、第3埠頭のベルトコンベアやサイロ周辺、港内の道路端、港から国道23号線への出口道路端、四日市市内の製油工場周辺空き地などで除草剤耐性ナタネ(ラウンドアップ耐性、バスタ耐性)の自生が確認され、一部は真夏にもかかわらず開花結実も観察され、明らかに輸入ナタネの零れ落ちであることが判明した。その結果、港から内陸部へのナタネのトラック輸送が零れ落ちの大きな要因であることが示唆された。

 今回、2005年3月17日、ナタネの開花時期であることから、我々はさらに調査範囲を広げ港から内陸部の製油工場までの国道沿いをたどって自生を調査した。その結果は驚くべきものだった。GMナタネはすでに港を離れ、内陸部に深く侵入し、国内栽培ナタネとの交配の危険性が現実的なものとなっていることが明らかになった。(調査結果の表、分布地図参照:)。


(1) 明らかになった事実(その1):
放置されたGMナタネの自生
 港内での自生状況は昨年7月以来変わっておらず、サイロ周辺や道路わきなどに多数のナタネこぼれ落ちが見られ、関係事業者、港湾関係者がGMナタネの自生の問題を自覚していないことは明らかである。事業者によるベルトコンベアの改良、サイロから搬出用トラックへの積み込み方法の改善は見られない。このことがGMナタネの拡散の最大の要因である。


(2) 明らかになった事実(その2):
GMナタネは港から内陸部に侵入、交配の脅威が現実に
 GMナタネは、港から国道164号線を経て国道23号線(名四国道)に侵入し、同国道を南下して三重県津市を越え、三重県一志郡嬉野町の製油工場までの48Kmにいたる国道沿いの道路端や中央分離帯、道路沿いの田んぼの畦、民家庭先やコンビニの駐車場など、国道沿線のいたるところの空き地に点々と自生していた。幸い開花期にあたり走る車内からも容易に確認出来、採取可能な場所で検体をとり、GMか否かをチェック出来た。自生は四日市港を出てからも途絶えることなく観察された。

 四日市港を出てから国道沿いの10検体(YK-N12からYK-N21)で見れば、9検体(90%)がラウンドアップ耐性であった。これは港内とその周辺の11検体のうち3検体(27%)がラウンドアップ耐性だったことと比べても異常に高いGM化率である。この事実から、すでにGMナタネは港から離れ内陸部深く侵入していることは確実である。その国道沿線には、畑や田んぼ、あるいは庭先園芸の土地が散在しており、国道から20m以上離れた田んぼの畦にいくつもあり、たくさんの花をつけ結実している大きな株がGM陽性であったこと、あるいは民家の庭先であたかも観賞用であるかのように自生開花している株がGM陽性だったことは、我々に大きな衝撃を与えた。こうした事実は、すでにGMナタネによる国内栽培ナタネや菜種の近縁種との交配が遠い将来の可能性ではなく現実に起こっているかもしれないことを示すものである。


(3)明らかになった事実(その3):
GMナタネの雑草化が始まっている
 港内よりも国道沿いの方が、GM化率が異常に高かったことは単なる偶然ではない。即ち、国道わきの畦や中央分離帯は除草剤による雑草駆除のあとが見て取れたが、そうした中にもGMナタネは生えているからである。除草剤駆除がGMナタネの生き残りを助長しているとすれば我々が懸念するGM植物の雑草化が始まっていることを示唆するかもしれない。これはアメリカやカナダの農家が体験し、雑草専門家が今後の農業への悪影響を懸念していることに符合する環境への影響そのものである。関係事業者や行政当局はこの事実を真摯にうけとめ、対策をとらなければならない。


(4) 明らかになった事実(その4):
拡散の原因はトラック輸送
 GMナタネは四日市港から国道164号線を経て国道23号線(名四国道)沿いに拡散しているが、その分布状況は津市を経て三重県一志郡嬉野町の製油工場の近くまで途絶えることなく、同国道から離れると自生はほとんど見られなかった。このことは、GMナタネの自生は四日市港からのトラック輸送によるこぼれ落ちが主たる原因であることを示す。他の製油工場へのトラック輸送があれば同様の自生が起こっていると思われる。全国のナタネ輸入港と製油工場の所在地を調べることは、GMナタネの自生調査の手助けになるだろう。


まとめ
 四日市港からGMナタネはトラック輸送を通じて、すでに内陸部に拡散している。四日市港から約50Kmの三重県一志郡嬉野町まで自生は確認された。国道沿線にはナタネの畑などもあり国内栽培種や野生近縁種との交配は具体的脅威となっている。このまま放置すれば、国内農業への影響は避けられない。また、今回の調査で国道の管理のための除草剤散布が除草剤耐性GMナタネの自生を助長している可能性も示唆された。 GMナタネの内陸部への拡散の主原因は精油所へのトラック輸送である。こうした事実を踏まえ、関係業界、港湾管理者、責任ある行政当局は速やかに対策を取る必要がある。

(文責:遺伝子組換え情報室  河田昌東)