●河田昌東(司会): |
| この50年を反省することなしに、食育、地産地消はない。語る時代は終わったといえる。 |
▼梶田初美(県園芸農産課主査): |
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給食関係の供給、米・麦・大豆などの生産振興の仕事をしている。
愛知県の事業として、学校給食地産地消推進事業を立ち上げている。
1.県産農産物啓発推進事業 |
| リーフレットを作り、児童生徒に配布。学校給食の栄養職員に地場産学校給食の手引きを配布。 |
2.県産米供給促進事業 |
 | 財団法人愛知県学校給食会に対し、あいちのかおりSBLについて補助金の制度を適応している。年間5400t供給。1俵あたり75円の補助。 |
3.県産農産物導入促進モデル事業 |
| 県産農産物を導入するために要する費用の一部を、県で肩代わりする。 |
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■坂野吉雄(名古屋市教育委員会学校保健課小学校給食): |
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名古屋市の小学校は260校あり、児童は12万いる。これだけ多いと統一の給食にすることができないので、5ブロックに分けて2から2万5から6千食を提供している。基本的には市内統一献立。
地産地消についての取組み
平成16年から名古屋地産地消推進協議会を立ち上げた。生産販売の生産者と消費者の交流、学校給食での利用促進、食農教育の推進、イベント開催などをテーマに、平成17年3月に『広げようみんなで取り組む地産地消』という冊子発行。
推進策として
1.学校給食への市内産農産物の利用
2.生産の拡大、品質の管理
3.米飯給食の拡大による食料自給率の向上
4.給食を通した食農教育
5.食物残渣のリサイクルの推進
名古屋市内の農業の現状(H15)
米の生産高:南区南陽町中心に3050t
野菜:タマネギ、白菜、キャベツ(12000t)。他に中川区のミツバ。
名古屋市の食料自給率は1%。
『みんなで食べる名古屋産』
H16からの取組み。テーマとしては、市内産農作物を給食に取り入れることで、食に関する指導に役立て、児童の地元の農業に対する意識を深める。
市内産米、野菜を使った給食の実施
年間3回。米とタマネギ、米と白菜、米と人参。
米は県内産あいちのかおりSBL使用。小麦については県内産を2割使ったパン。
食育に関して、先生用の指導要領、給食時の放送用資料配布。生産者の声をのせている。
H17の取組み
牛丼でタマネギを使用。今年は市内産キャベツを加えて、4回の市内産農産物の日を実施。 |
▲和田典子(自治労学校給食) |
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学校給食の現場(緑区大清水小学校)ではたらいて14年目になるが、昔と比べて給食も随分変わった。今の給食は随分おいしくなった。
献立の仕組みについては、調理員代表として献立作成委員の取りまとめ役を5年している。調理員代表7名、栄養士代表7名で献立作りをしている。
毎日食中毒を起さないように、安全でおいしい給食を作ろうとがんばっている。全国の会議などにも出席して、子どもたちのためによい給食を作ろうと努力している。
子どもたちや母親との交流係りを持つようにしている。
地産地消の取組みが盛んになってきた。むかしはあたりまえだったが、一学期に一度くらいしか地元の農産物を取り入れることができない。これでは不十分。
あいちは全国有数の農業県だ。最大限に活用し、愛知産の野菜の収穫時期にあわせた献立作りをする。地域の農産物について知る。126000食の給食を一度に地域産でまかなうのはむつかしいので、16区を5つに分けて時期をずらせて実施している。これをさらに柔軟性をもたせて細かく実施するようにすればいいのではないか。学区ごとの農産物もある。
数年前給食費の値上げをしたが、保護者に理解をしてもらうため、ジャムやデザートなどをふやす事になってしまった。それを減らす努力をしているが、5割くらいにはデザートが付いている。O−157の影響で、バナナとみかんだけしか生のデザートは出していない。あとはチルド果物などの袋詰めの加工果物を出している。旬のものがよいに決まっている。
調味料については、かつてアミノ酸混合醤油を使っていた。本醸造に切り替えている。8年前から要求してきたが、今年から週3回の米飯給食になった。
アレルギーの問題:牛乳も選択性にしたり、たまごなどの除去食を用意している。
給食を通して子どもたちが変わってゆく。最高の食育の場だ。安心安全な学校給食を実現してゆきたい。 |
●河田: |
| 現在愛知県は米飯給食が週に3回。さらに地産地消のレベルを上げようとすると、何が解決すべきテーマなのか。 |
▼梶田: |
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県全体で見れば年間一人当たり60Kg食べている。愛知県の人口700万人なので42万トンが年間に消費されている。愛知県の年間生産量は16万トンである。愛知県以外の米をも消費している。
トレーサビリティのしっかりできる米を使用してゆかなければならない。 |
●河田: |
| 米の調達自体に何か問題があるのか |
▼梶田: |
| そうではなくて問題ないのだが、地産地消にこだわると名古屋市内産にこだわろうとすると年間3000tの生産量に対し、200万人市民がいるため、地産地消は不可能。12万トンの米の生産を県内でも無理なので県外から入れる。 |
●河田: |
| どうやって供給量に見合った生産量を確保してゆくのが、地産地消につながる。名古屋市の取組みは |
■坂野: |
| 地産地消を進めるのに名古屋市としての課題は、名古屋では限界があるので、野菜については県内産を使うようにしている。名古屋市産の場合は、統一して使うという方法をとっているので、流通経路についても考慮する必要もある。地産地消の拡大を考えている。 |
●河田: |
| 供給の問題がネックになってくるが、小さな範囲で取り組めばよいのではないか。 |
▲和田: |
| 名古屋市全体としての取組みではむつかしいが、なるべく小さな単位での取り組みをしてゆけばいいと思う。統一献立ではむつかしい。 |
●河田: |
| 名古屋の子どもがいっせいにおなじ給食を食べているとは知らなかった。 |
■幕内秀夫 |
| 地産地消については国のレベルで考えなければだめ。その後で県、市となる。生産者のいないところでは無理。 |
●河田: |
| 地産地消のシンポは今年で2回目となる。生鮮食品の多くが国産になってきている。要求に対して、こたえる立場がその気にならなければいけない。米飯給食にすれば、ひとりでに国産が必要になり、自給率が上がるということだが、週4回の米飯給食は無理なのか。 |
■坂野: |
| 実は今年から週3回になった。すぐに4回というわけには行かない。今後の課題と考えてている。 |
■幕内: |
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中国の冷凍ホウレン草の農薬の問題があったが、ごはんをふやせば冷凍ホウレン草は使えない。米飯給食と国内自給率は正比例している。
愛知でも完全米飯給食になるところが出てくる。全国的にもどんどん増えている。 |
●河田: |
| 米飯給食を中心にすると栄養のバランスが悪いという話しがあるが、どうか。 |
■幕内: |
| 和食では塩分が多いということはいえる。米国では成人病が非常に増えている。和食は健康に良いという答が出ている。栄養バランスの問題はない。 |
●河田: |
|
学校給食と子どもの健康を考える会の具体的な活動。地産地消よりも食育の問題が上。歯科医や医師の意見をもっと聞くべきだ。
ごはんとパンは違うという活動がメイン。地産地消と言うなら、子どもの健康のためなら、3回を4回にするという宣言がいる。 |
■坂野: |
| 幕内さんの意見は十分に納得する。肝に銘じて実行に向けてゆきたいと思う。 |
●河田: |
| 地産地消のためには給食を自校式にするといいとおもうがどうか。 |
■坂野: |
| 名古屋市の場合は自校調理だ。 |
■幕内: |
| 全国的には都会ほど自校式が多い。地方ほどセンター方式が多い。中学は民間委託が進んでいる。 |
●河田 |
| 米の品種をあいちのかおりSBLに特定しているのはなぜか。 |
▼梶田: |
| あいちのかおりは県農試が作った品種で、それに病気の抵抗性をつけたもの。縞葉枯れ病といもち病に強い品種で、従来のものより農薬を減らせるというのが第一の理由。愛知県の風土にあった品種。 |
●河田: |
| 9月から米国産牛肉が入ってくるかもしれないが、学校給食にもそうか。 |
■坂野: |
| 現在は豪州産を使っていて、保護者に不安を与えないようにしている。解禁されたからといってすぐに米国産を使うと言うわけには行かない。様子を見ながら慎重にする。以前は米国産を使っていた。 |
●河田 |
| ごはんはどうしているのか。 |
▲和田: |
| 業者が炊いて納入している。 |
●河田 |
| 各学校で炊飯したほうがおいしいのではないか |
■坂野: |
| 設備や人の問題がある。まだ検討していないが、そういう方向にしてゆきたい。 |
●河田 |
| 子どもの健康に給食問題が裁判になるといっていたがどうか。 |
■幕内: |
| 保育園の給食は文部省でなくて厚労省の管轄になっている。地域によって弾力的な対応になっている。ある市で牛乳を出さなかった保育園に、市が強く迫ったことに対してのものだが、終息しそうな雰囲気。 |
●河田 |
| 建前は弾力的だが実際はどうか |
■幕内: |
| いちばん変えられるのは献立なので、問題はない。 |
●河田 |
| 学校給食で供給を変えるということが、どういう風にむつかしいのか。 |
▼梶田: |
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いちばん安定して供給できるのは業者(市場)だが、入手時に地元産という限定がしにくい。細かい対応がしにくい。大量流通に載ったほうがコストが安い。
地元の生産者グループなどとネットワークを作って、給食センターに供給する体制をつくるのが第一歩となる。
サイズにばらつきがあると、仕事がしにくい。生産者が事前の下準備をしたうえでセンターに持ち込んでもらえるとよいのではないか。 |
●河田 |
| 具体的にそうしてゆきたいのか。 |
▼梶田: |
| 地域差があるが、地産地消を進める上で、農協がいちばん頼りになる。 |
●河田 |
| 米飯にするとコストが上がるといわれるが、それはむつかしいことなのか。 |
■幕内: |
| コストの話に給食費の問題は付いてまわる。地元産にこだわらず、まずごはん食を考えたほうがよい |
■坂野: |
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給食費を上げるのはたいへんなこと。米飯食にするとコストがあがるというわけではない。米飯の回数は課題だが、野菜については象徴的な部分で名古屋市産を実行している。
柔軟性をもたせて進めてゆく必要がある。地産地消が進んでくれば、名古屋市産というような方法は必要なくなる。 |
●河田: |
| 輸入野菜をつかっているのか。 |
▼梶田: |
| 基本的には使っていない。 |
▲和田: |
| 生野菜はすべて国産。冷凍野菜かつて輸入を使っていたが、いまではグリーンピースだけを輸入物をつかっている。 |
●河田: |
| 10円給食費を上げるのはむつかしいということだが、そのためには大規模流通システムが必要になるのはわかる。にもかかわらず、ローカルな意味で地産地消を進めるにはどう折り合ったらいいのか。 |
▲和田: |
| デザートなどには添加物がはいっている。牛乳についても選択性か時間をずらせるとよい。 |
■幕内: |
| 給食費の未納問題は全国で深刻だ。生産県では米飯化でコストは下がるが、名古屋市のような都会では、学校給食は民営化されるだろう。民営化もそれはそれでよいが、給食の中身から考えてほしい。 |
●河田: |
| 米飯給食はこどもに受け入れられるのか。 |
■幕内: |
| 100%受け入れられる。 |
▼梶田: |
| ごはんのほうがよい。 |
●河田: |
| この問題は山積しているので、少しづつ解決してゆかなければならない問題。至上経済のなかではむつかしいのではないか。 |
■坂野: |
| こどもは選ぶことができない以上、安全安心は最優先。 |
●河田: |
| 牛乳についてはどうか。 |
■幕内: |
| 牛乳はごはんに合わない。選択性でよい。 |
●河田: |
| 残留農薬の検査については公開されているのか。 |
▼梶田: |
| 独自で検査をしているが公表しているかどうか確認していない。 |
●河田: |
| 時間も迫ってきたが、今回のシンポジウムについて、それぞれのコメントをお願いします。 |
▼梶田: |
| 学校給食についてはまだ3年と未熟。今後に生かしてゆきたい。 |
■坂野: |
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学校給食については、とにかく食べさせるという段階から、栄養の段階、さらには安全性へと進んできた。さらに食育も課題としてある。
意識のない親は問題。長い目で見てゆかなければと思う。 |
▲和田: |
| ただの作り手としてでなく、もっと色々な提案をして、子どもたちの側に立った調理員になってゆきたい。 |
■幕内: |
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病気が世の中を変えるというが、血液検査をすれば間違いなく給食は変わるだろう。米飯を増やせば、必ず変わる。米飯給食が第一歩。
50年前にできた学校給食法をもう一度見直していただきたい。本気になって、子どもの健康と農業、地産地消を進めていっていただきたい。
学校給食は民営化されやすい。とくに調理員について。 |