日 時 : | 2005/7/16(土) |
場 所 : | 名古屋市教育館 |
■このページでは 幕内秀夫氏 の基調講演を要約しています
学校給食と子どもの健康を考える会を作って運動している。病院で食事相談を20年続けてきたが、患者の食事を変えることがまずむつかしい。
食育と地産地消の問題を別々に考えることはできない。そしてこの問題を考えるにあたって50年前の食について考える必要がある。そのころには「何を食べるか」ではなく、「何がとれるか」だった。食事の基本はそこに戻る必要がある。
栄養学が現れてから、「何を食べるべきか」に変わってしまった。今から50年前にはそれぞれの地域でそれぞれの知恵があった。子どもの肥満、アトピーなどもなかった。米の生産調整も必要なかった。昭和38年ごろには食料自給率も85%あった。
50年前に現れた栄養教育はドイツから紹介されたもの。ドイツは緯度では北海道にあたる寒い国であり、日本のは気候がちがう。ドイツは寒くて雨が少ないため植物が育ちにくく、動物性の食品が中心となる。日本には海があり、山がある。四季がはっきりとしているので食材が豊富。味付けも素材の味を大切にする調味料が使われるが、ドイツなどの寒冷の国では、素材の味よりもソースなど調味料の味で食事をする。
日本は栄養改善普及運動をドイツ式で行なった。その結果パン給食がメインとなってしまった。日本の食を崩壊させてしまったのが学校給食。食糧事情が悪かった当時は仕方がなかったかもしれないが、いまだにパン給食というのはおかしい。日本の食が崩壊したのは、ごはんを食べなくなったことがいちばんの原因。輸入小麦が増えたが、その場合、パン食では水分が少なく油を使わないと喉を通ってゆかない。
過去50年で不健康な子どもを増やしてしまった。滋賀県近江八幡では40%の子どもが高コレステロール。都会ではもっとひどいだろう。愛知県豊橋市でも糖尿病抑制運動を小学生対象に行なっている。その原因を作っているのが油と砂糖。
世界で8億人が飢えているといわれるのに、米を1千万トン作れる日本がトウモロコシを輸入して家畜のエサにしている。日本が砂漠なら仕方ないが。
今後、ごはんを食べない人口がどんどん増えてくる。米の生産調整はさらに進むだろう。
この10年の食品の安全性の問題は、すべて小麦とトウモロコシが原因。ポストハーベスト、遺伝子組み換え、狂牛病などの問題は、すべて輸入の小麦とトウモロコシに起因している。
学校給食で食事を教える以外に方法がない。なぜなら家庭を変えるのはむつかしいからだ。子どもに朝食を作らない母親にだれが朝食を作らせるのか。保育園では朝食を始めるところが出てきている。24時間体制の保育園もある。園児を迎えに来る母親に、惣菜を売っている保育園もある。給食の重要性がわかっている中で、パン食を行なっていてはいけない。
なぜパンがいけないのか。学校給食法があるが給食は余剰農産物のはけ口ではない。ポストハーベストも食品添加物も米食には関係ない。塩で握っただけでおいしい米を食べてこられたことが、日本人の長生きのポイントだった。水分30%のパンでは、油と砂糖がないと食べられない。パンにホウレン草のおひたしではだめだが、バター炒めなら飲み込める。
全国の給食はかなり乱れている。どこかの社員食堂でこういうものを出したら社員は黙っていないだろう。ごはんとみそ汁に牛乳は必要ない。牛乳は選択性にするか、時間をずらせて出すべきだ。
給食を変える以外に方法はない。鳥取市では年に2回学校給食への取組みを地域ごとに新聞発表して、地産地消の啓発、推進をしている。秋田県鶴田町では町長がごはん給食に切り替えた。宇部市でも。全国で1400校が米飯給食に切り替えている。
名古屋市もすぐにでも100%米飯給食に切り替える宣言をするべきだ。 |
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