●基調講演:篠原 孝氏
イタリアでは『スローフード』、英国では『フードマイルズ』、日本では『地産地消』、『循環型農業』など。韓国では『身土不二・農都不二』などの言葉が浸透している。
これらの言葉の意味するものはすべて同じといってよく、「わたしたちの身体と土とはおなじもので、切り離せない関係にある」ということ。食と農が身近な関係にあることで、運搬によるエネルギーの無駄がなくなり、環境も保たれる。消費者と生産者との信頼関係も生まれ、食の安全に結びつく。さらに篠原氏の提唱する『旬産旬消』は人の健康の基本でもある。
基調講演の中で篠原氏は以上のような事柄の他に、日本では特に30代前後の消費者の食に対する意識のなさと、学校給食などを通しての『食育教育』の重要性を強調した。 | |
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■太田進康氏(県農水部農林総務課):
県としては県内産の農産物の地産地消のため、量販店などでの販売促進をしており、最近少しづつ浸透しつつあるが、まだまだといったところ。学校給食への地元農産物の利用もあまりされていない。これは給食用の食材に輸入野菜を含めて安価なものが選ばれてしまう傾向が強いため。 |
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■小川洋治氏(生協役員):
現在、多くの消費者が食の安全を求めている。食肉の文化は日本の食料自給率を大きく下げる要因となっている。また環境への負荷も大きい。解決策としては伝統食文化への回帰、食育教育の必要性。自然環境の危機をも含めて、地産地消をすすめてゆかなければいけない。 |
■稲葉光圀氏(NPO法人民間稲作研究所)
1950年代から有機稲作の研究と技術の確立のために活動してきたが、最近になってやっと、国からも財政援助がもらえるようになった。1960年代初めにはいもち病対策のための農薬は使わずに済むようになった。除草剤は水の汚染という心配から、使わないという方向に進んできている。こういった研究機関が民間でしかないため、有機稲作の技術の普及がおくれている。最先端の技術も必要だが、有機の技術もこれからは必要となるだろう。 |
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■松沢政満氏(新城市・福津農園)
循環型・持続可能な農業を目指している。地球規模でのエネルギー、環境、貧困の問題を解決するにはこの農業は非常に有効だ。これからも消費者と密接な関係を保ってゆきたい。 |
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■藤井潔氏(愛知県農業総合試験場)
農に貢献したいという夢をもって農業試験場で仕事をするようになった。今までは病害虫に強いイネの育種のために頑張ってきた。現在は愛知でも栽培可能なパン用小麦の開発をしている。小麦の赤カビ病を克服するのが課題。そうすれば有機も可能となるだろう。 |
■今回のシンポジウムで明確になったことは、第一に消費者の意識、姿勢がいかに大切かということ。安全な食のために地産地消は不可欠であること。それぞれの立場の人が互いに提携しあうなかで、食の安全は確保しうる。
ここで、ひとつの課題が提起されたことになります。今後、食の安全のため、具体的にどのようなことができるのか。それにはどういった提携が必要なのか。大きな問題も見え隠れしますが、今回のシンポジウムが次へのステップに結びついてゆけるような努力が必要です。 |
シンポジウムの冒頭、今回の討論の進行役・名古屋大学の河田昌東さんは『流域自給』という言葉に言及しました。これは02年、無念にも交通事故で他界された由利厚子さん(くらしを耕す会)が推し進めてきた大豆畑トラスト運動のことです。木曽川という恵みの流域の上流の『生産者』と下流の『消費者』との有機的な関係作りのことです。これは『地産地消』『循環』を非常にわかりやすい『川』の流れで描いた『提携』のすがたです。
このシンポジウムが彼女の遺志をつなぎ、進めるための一歩となることを祈ります。 | |
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