高オレイン酸大豆
河田昌東(かわたまさはる)
遺伝子組換え情報室
2019/10/14

ゲノム編集高オレイン酸大豆:
開発者:
Calyxst社(アメリカ・ミネソタ州)

商品:
高オレイン酸大豆(大豆中の脂肪酸の80%がオレイン酸)

技術:
ゲノム編集酵素(TALEN)を使って、大豆の遺伝子FAD3A(オレイン酸をリノレン酸の変える酵素の遺伝子の一部)をノックアウト(壊す)した。

この大豆については、すでに別の企業(Collectis社:ミネソタ州)がTALENを使ったゲノム編集でFAD2-1AとFAD2-1B(何れもオレイン酸をリノレン酸に変える酵素の遺伝子)を壊して、高オレイン酸大豆を作っていたが、今回、Calyxst社はFAD3Aを壊して、よりオレイン酸濃度の高い大豆を作った。

問題:
ゲノム編集酵素TALENのDNAを大豆の細胞に入れるのに、Agrobacterium法を使った。この細菌のプラスミドは宿主(大豆)のDNAに取り込まれる事が分かっており、使ったベクター GmFAD3_T02.1は確かに宿主大豆のDNAに組み込まれた(論文1より)。このベクターには抗生物質アンピシリン耐性(AmpR)遺伝子が入っている。

この論文によれば、大豆の培養細胞(プロトプラスト)にベクターを入れたF0のDNAには確かにTALENのDNAが存在した。その次世代細胞(T1)にもこのDNAは安定して受け継がれた(PCRによる検出)。25個のT1株の中で20株にはTALEN遺伝子が存在したが、5個には存在しなかった。この中の二株で自家受粉させFAD3A遺伝子が2倍体の染色体のどちらにもないホモ株を作った(T2)。

結論として、
このゲノム編集大豆にはベクター遺伝子がない、と主張しているが、PCRの分析では、TALEN-DNAの存在だけをチェックしており、マーカー遺伝子の抗生物質耐性遺伝子の存否にはふれていない。

なお、FDAはこの高オレイン酸大豆に対して、GMOでないことを確認し規制しないことを表明している。

論文:
BMC Plant Biology(2016)16:225 (添付)
Zachary L. Dermorest et al.
Direct stacking of sequence-specific nuclease-induced mutations to produce
High oleic and low linolenic soybean oil.