米国、オースティン、テキサス大学

2001年10月10日     

訳:道 長

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パーシー・シュマイザー氏講演 

『バイテクが農家と消費者の権利を脅かす』

遺伝子操作種子会議にて

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1■

オースティンに来られてうれしいです。わたしをここまでお誘いくださった方々に感謝します。 私が今ここにいるのは、何が、起こるかもしれないとか、起こり得た、起こる可能性がある、などということではなくて、この国で遺伝子組み換え(GM)カノーラ菜種と大豆の導入によって何が起こったのかということをお話するためなのです。

 

ここで私はみなさんに少しだけ裏づけと、また大筋を示しておかなくてはいけません。私は53年のあいだ農を営んできました。その50年間をカノーラの自然育種による作出に費やしてまいりました。私はカナダ西部では種子の採取農家、保守農家として知られていたのです。農家のかたわら、25年間を公職としても過ごしてまいりました。その間、議会の議員、また地域の長をしておりました。

 

その公職の年月の間、みなさんご存知の連邦と州の両方の農業委員会にも関わっていました。そしてその間ずっと、農家の権利、特権、そして彼らに有利となる条例や法律のために闘ってきました。このようなことが私の身に降りかかったとき、細かい話しはおいおい詳しくお話しするとして、それに対して私は立ち上がらなくてはならなくなったのです。

とにかく、そんなところで大体の背景はお分かりと思います。では早速、何が私に起こったのかという話に入ってゆきたいと思います。

 

1998年のこと、何の警告も兆しもまったくなしで、モンサントは私に対して告訴を仕掛けてきたのでした。訴訟の内容は次のようでした。私がモンサントのGMカノーラをライセンスなしに獲得した。そして、そのことが彼らの特許を侵害した、と。さらにモンサントは、その不法な獲得を私が種子倉庫から、あるいは隣家から、またあるいはどうにかして盗んで得たのだと述べたのです。

 

ですから私は、モンサントに対して立ち上がり、その種子を買ったこともなければ、彼らに何をしたおぼえもない。そしてもしも私の農場の私が育てたカノーラの中にその種子が、モンサントのGM種子か作物が含まれているというのなら、あなたたちが混入させたのだ。本来、あなたたちが私の種子をぶち壊したのだ、と言ったのです。そこで私と妻は、彼らに法的責任があるのでは、ということで、モンサントに立ち向かう決心をしたのです。そのひとつの理由というのは、1890年代、祖国からアメリカにはじめて移民してきた私の祖父母が、さらにカナダに移住してきたことから始まります。私の両親はアメリカで生まれました。

 

わたしの祖父母がなぜヨーロッパを離れたのかといいますと、彼らは自ら求める種子を植えるという希望をかなえるという目的があったからでした。それが、私たち夫婦が闘う決心をした大きな理由です。結果的に、私の申し立ては2年半後に法廷へと持ち込まれました。そしてモンサントは私を公判の予審に引きずり込んだのです。彼らは私を負かすために、あらゆることをしたのです。一方私はそれに対し大金を費やしました。私たち夫婦は、私たちの年金のすべてを掛けました。私の弁護士代だけでも、今日に至るまでに2000万円以上かかってしまいました。

 

私が不法に種子を所持したことに対して、モンサントはすべての申し立てを取り下げました。彼らは、その種子がどのようにして私の土地に入り込んだかが問題ではなく、私が彼らの特許を侵害していると述べたのです。2000年5月、裁判が開始され、私の裁判は2週間半続けられたのです。その結果の判決はどうだったでしょう。わたしがこれからお話しようとしている3つのことで、みなさまに警鐘を鳴らします。実は世界中をまわって訴え続けているんですが。

 

私の例というのは、特許法対個人の権利、あるいはいわゆる農家の特権(カナダでは)、種子農家の権利という重要な問題になってきました。連邦の法律では、農家には自家採取した種子を植える権利が当然のこととしてあります。

 

これが、判事が下した判決です。その中にはたくさんの見方があるんですが、一番重要な点についてお話しましょう。

まず第一:モンサントのGMカノーラがどのようにして私の畑に侵入したのかということは問題ではないこと。さらに詳しく続けることには、交雑したとか、風に吹かれて飛んできた、鳥が運んだ、蜂、動物、あるいは農家のトラック、コンバインなどからこぼれ落ちたとかいうのは、問題にはならない。たとえ私が自分の土地にあってほしくないと思っていたとしても、事実そこにいくらかの作物があったという事実がある以上、私がモンサントの特許を侵害したことになるのです。

 

第二に:これはもっとも重要な点だと思います。判事の判決では、通常の在来種を栽培する農家で、どのような作物、樹木であろうが、種であろうが、意に反してモンサントの遺伝子と交雑したとしたら、そして資産に損害をこうむったとしても、その作物はモンサントの資産となってしまうということなんです。

 

よく考えてください。世界中の農家、造園業者などにとって、そういう意志がなくても、モンサントの遺伝子と交雑したら、その所有権はモンサントに移行してしまうということです。

 

第三に;私がモンサントの特許を使いもしなかった(モンサントのラウンドアップ除草剤またはグリフォサートを作物に決して使用しなかった)としても、そんなことはどうでもよいということなのです。私の土地にまさにそのGM作物が存在していた事実があるということなのです。

 

これらのことは、特許法の力が農業者の権利を上回っていることを意味しています。農家は基本的に永久的に権利・特権を有しているのです。ですが特許法が農家の権利を奪うことが、たいした意味にはならないということなんです。それに特許権は全世界に及ぶわけです。そのような判決が下されたすぐに、わたしたちがした事は何かといいますと(それは次の年の春になってしまうだろうということでしたが)、以上、3点についてのモンサントに対する上告です。その中でまず述べたのは、そこには法的責任というものがあるということです。もしモンサントに特許があるとしても、彼らに環境に対してそれを放つ権利は与えられていないということ。つまり、その結果影響を受けた生命というのは、コントロールができないということを彼らは知っていたし、そのつもりもなかったということ。そして現在、それはコントロールできなくなってしまっている。法的な責任が課せられるということなのです。

 

2■

 

次に、生命のあるものに対する特許に関して、もし、誰もが種子か植物に特許を得ることができるならば、どこでそれを止めるんでしょう。動物を、鳥を、蜂、昆虫、魚を、です。また、誰がそんなことできるんでしょう。その国でですか、世界中でですか。どこまで及ぶんですか。そして、私たちは結論付けました。人に対して特許が取れるものでしょうか。

 

判決に関しては、遺伝子がどのようにして何かに入り込むのかということは、重要ではない;それが主権者のものになるということ。私たちは特許法にも対決しているんです。特許法が引き出される場合、それはかつて生命のあるものに対して適応されたことがありません。それが、私たちが特許法に対決している理由です。

 

さらに、いったん環境の中に放たれれば、生命というのは呼び戻すことはできない。それはそれっきりとなってしまうのだ、と私たちは発言しました。もう少し特許についてさらに踏み込んでゆこうと思います。でもちょっとその前に・・・。なぜ農家は1996年、認証が降りたGMカノーラの栽培をするための契約をモンサントと交わしたのでしょう。そして、われわれと国境を越えた米国では、モンサントは大豆農家に対して遺伝子組み換え大豆を売る許可を得たのです。

 

その理由を私はこう考えます。まず、モンサントはそれがより栄養価があり、高収量で、そしてとくに減農薬であると、農家にふれこんだ。同様に、国境を越えた西部カナダでも、大量の化学肥料、殺菌剤、殺虫剤、除草剤が使われています。

 

私たちの国土も水も汚染されています。農家はいまや自らを殺そうとしている。さらに環境を。つまり昆虫を、鳥を、そしてそのほかすべてのものを、です。農家がモンサントに耳を貸したのは、経済的な理由のみではありません。これは事実だった。彼ら農家は、彼ら自身、私たちが環境に対して行っている破壊ということを、私と同じように自覚していたからなのです。だからモンサント社が『減農薬』と唱えたとき、それは農家の心を捉えたわけです。

 

4、5年後、何が起こったでしょう。それは、高栄養でもなければ、高収量でもなかった。モンサントが高収量を宣伝したときには、彼らはその品質については一切述べなかった。品質は反落したのです。

 

私たちが訴えたこと;減農薬について。農家では今では6回から10回余分に農薬を使っているのです。そのわけは、カノーラはスーパー雑草を生み出してしまったんです。スーパー雑草を抑制するのに、それだけの回数余分に除草剤が必要になってしまっているというわけです。

 

スーパー雑草とは何でしょう。このスーパー雑草は、この4,5年の間で、西部カナダの、カノーラを栽培してもいない、小麦畑や大麦、オート(えん麦)、アマなど、すべてにわたる畑に広まってしまいました。何が起こっているのかといいますと;カナダの5,6社がGMカノーラを販売していて、おそらく、米国ではたくさんの会社がやはりGM大豆を販売しています。たとえば『A』という農家がある会社からGMカノーラを買い、また『B』という農家がある会社からそれを買う、ということは、農家はモンサント社からGMカノーラを買うことになるんです。3種類のGM作物からこぼれた遺伝子は、いまやひとつの在来の植物に入り込み、スーパー雑草となってしまいました。それを枯らすのに今は3種類の農薬がいる。モンサントは言うのです。「心配は要りません。問題もありません。まもなくスーパー農薬を発売しますから。そのテストの済む2001年の終わりまでには、ひとつの作物に5つの操作された遺伝子を組み込むことをお約束します。そうすれば、スーパー雑草がどうなるかお分かりになることでしょう」

 

モンサントはどのようにして契約を規制するのでしょう。それは私にとっては、もっとも悪どくて、抑圧的なものだと思います。人々は北米のカナダと米国で、一体何が進められているのか理解できていない。人々の権利と自由は奪われつつあるのです。

 

モンサントは農家から契約のサインを取ります。その契約の中で、農家は自らの種子を使ってはいけない。つまり、自家採取の種子を使うことのできる権利を、契約により放棄するのです。先ほど申し上げましたが、カナダの連邦法の下では、農家は自家採取の種子を使うことが許されているのです。

 

農家は農薬もモンサントから買わなくてはならないんです。収穫の一部を次の年に種子として使ったことが発覚、あるいは同社がそれを見つけた場合は、罰金あるいは収穫物からの収入のすべて、あるいはその廃棄を求めることができるという、非公開の声明書にサインしなくてはならないのです。モンサントには農家に対して発言権があるのに対し、農家にはそれがないのです。

 

また、農家はエーカーあたり、15ドルの技術料を支払わなければなりません。しかしながら、この契約のもっとも醜悪な部分というのは、契約後、農家は自分の土地に対するモンサントの捜査官の行使を許さなければならないことです。穀物の畑、土地に対して同意なしに、不正の有無を検証する目的で彼らが侵入することを許さなければならないのです。

 

モンサントはそこでとどまらないんです。契約を交わしている農家があるなら、彼らはほかの農家の土地にまで侵入するというんです。不法侵入ですよ。私は泥棒行為という言葉を使うのにためらいもいたしません。モンサントのラウンドアップ耐性カノーラを栽培しているのかどうなのかを見極めるために、農家から種子や作物を盗むことすらするんです。

 

(一枚の紙片を掲げながら)これはパンフレットにあるモンサントの広告です。下のほうにこんなことが書かれています。「もしあなたが、隣接の農家がライセンスなしで栽培していると感じたら、それを密告すること」。そうするとどうなるかというと、モンサントの派遣した捜査官がその農家にやってきて、土地となく家となく侵入し、家族に脅迫まがいに言うのです。「われわれは情報あるいはうわさを入手した」。そう、『情報あるいはうわさ』と彼らはいつも言うんです。「もしお前が潔白でないなら、ぶっ壊してやる。農場をとりあげてやる」と。

 

3■

 

これは自由の国の中でのことなんです。それから、農場主が敷地内で彼らを捕まえて「不法侵入だ。お前たちは私の穀物か種子か作物を取ろうとしている」と言っても、彼らはそれを持ち去ってしまう。「いいだろう、出るところへ出てやろうじゃないか。そっちがその気なら、裁判所中引きずりまわしてやる。そのころにはお前の農場もなくなってるさ。」

 

これは金の力、権力です。こんなことがあると、地域の社会構造に対して、どんな影響がおこるのかご理解できるでしょう。モンサントの捜査官(彼らは通常2人一組でやってきます)の訪問を受けたとすると、その人は彼らが退去するだろうと思うわけです。でも「どこの農家に来たんだろう、となりの家、あるいはまたそのとなりの農家?」と。そんなことで、農家同士信頼をなくすというか、一緒に働くことすらできなくなってしまうんです。

 

北米では、米国とおなじように、農家は国を発展させるために、一緒に働かなければならなかった。そしていまでは、私たちの地域の社会の絆に傷をつけてしまおうという会社が存在するんです。

 

彼らはそれだけではとどまらないんです。もしその農家が留守だとわかると、ゆすりの手紙まで送りつける。一通じゃないんですよ。その一通づつの手紙の中で、どれだけたくさんの数の手紙か見当もつきませんが、基本的に彼らが何を言おうとするかというと、「我々には、あなたの農場でライセンスもなしにモンサント社のGMカノーラが確かに栽培されているらしいという根拠がある。そのことで、今回の場合はあなたを訴えるようなことはしないから、28750ドルをお支払いください。請求はいたしません。さもなければ・・・。」

 

こんなようなゆすりの手紙が、それだけじゃなくて、さらに、「この調書と示談書についての、事実と示談金額を公表する独占的な権限がモンサント社にあるということをご承知置きください。この件に関しては他言は無用としてください」と、農家の発言の自由、権利をすべて封ずるのです。これがこの自由社会の中で起こっていることなんですよ。モンサントの力なんです。農家の権利・特権はどこへいってしまったんでしょう。行政は一体どうなってるんでしょう。

 

私の公判で、カナダの農業省の中のカナダ食品検査局が、西部カナダの農業試験場と研究所の研究開発のための寄付金を、モンサント社から受け取っていたということが発覚しました。これらの関係者たちは、モンサントから寄付金を取っておいて、同社がGMカノーラを農家に売込みしやすいように、規制に対して便宜を計っていたんです。

 

一方では寄付金を取っておいて、また一方では規制に便宜を計っているんです。カナダ食品検査局といえば、食品の安全に関してカナダではもっとも信頼できるところなのに、わたしの公判に際して、彼らがGM食品について何のテストもしなかったんですよ。彼らはモンサント側のデータしか持ち出さなかったのです。

 

その事実を認め、さらにこんなことを言うんです。その言葉というのは、いつも彼らはそれを持ち出すんですが、「実質的同等である」と。いくつかのタンパク質を含んでいて、何か不明なものも含んでいる。それが実質的同等である。それ以外のことは何も言わないんです。その他の部分については、基本的に何もカバーしていない。それは、彼らが何もテストをしなかったからなんです。われわれの政府の省庁が、モンサントから寄付金を取り、見返りに規制に便宜をはかり、基本的に寝床をともにしているんです。そして、おなじことが米国でも行われているに違いないんです。このようなことは、第三国では行われなかった。そして、先進国において行われていることなんです。私がお話しする前の方(ジム・ハイタワー)が話されたように、これは支配であり、いかに彼らが我々の政府の省庁の中に潜入しているのかということです。

 

【ロドニー・ネルソン氏のビデオ上映】

 

ビデオからの大まかな引用(ネルソン氏の言):

「米国内で名の知れた種苗会社から、モンサントのGMに汚染されていない大豆を購入することが不可能であることを断言することができます」。

 

【ビデオ上映終了。パーシーさんの発言再開】

 

ロドニー・ネルソンとはいつも連絡をとっています。彼のお父さんはバイパス手術を7回やりました。1ヶ月くらい前、病院から戻られてから、私の家内が電話で彼とお話をしました。彼は興奮してしまっているものですから、家内が言ったんです。「落ち着いて、落ち着いて。また心臓やられちゃうわよ」、て。

 

ネルソン氏が引き合いに出していた農家というのは、今私が話をした方でして、モンサントにゆすりの文書を送りつけられた本人なんです。彼は4回も心臓発作にやられました。私の故郷サスカチュワン州に住んでいますが、彼はもう農業はできません。彼の奥さんは「私を刑務所に送るなんて。夫は重病人なんですよ」。とモンサントに訴えました。奥さんは一人の従業員と農作業をしていますよ。すると、モンサントは言うんです。「あなたを刑務所送りになぞしたくありません。農場を売ってしまいさえすれば、支払い可能じゃありませんか」と。彼らはまさにそう言ったと、彼女は私に話してくれました。

 

これがカナダ中、米国中の農家に及んでいるモンサントの残忍と恐怖の文化なのです。多国籍企業がかくも低レベルに成り果てていることは、想像しがたいことです。

                                    

 

 ■4■

 

私の場合もそうだったんですが、もしある農家が法廷で私にとって不利なことを証言したとすると、もちろん彼らは現金では支払わないんですが、現金2万ドル分の農薬を彼に対して提供するんです。その農家はすでにこのことを認めています。

 

農家では自分の種子がある種のカビや病気の予防のために、種子消毒を頼むために、種子の処理業者のところへ行くことがあるんです。そういう会社へ行き、種子の処置を頼むわけです(私の場合もそうです)。そこには商品をよく負けてくれる経営者がいるんですが、モンサントとねんごろだったんです。基本的に賄賂の受け渡しがあったんです。その会社では見返りに、農家の知らないうちにそれぞれの農家の種子のサンプルを、モンサント社に供給していたのです。彼らがしていたことというのは、それぞれの農家の種子を抜き取って、モンサントに横流しする見返りに値引きを受けることだったんです。モンサントの堕落ぶりはこのようなレベルなんです。

 

あるサスカチュワンの農家の、えーと一軒だけじゃないんですが、その家の奥さんははっきりものの言える人なんですけど、モンサントの捜査官が家に来たので、厳しく追い返したんです。すると彼らは「見つけてやるからな」と言ったんです。そして一週間ほどたって、一機の飛行機がその農家のカノーラ畑の上を飛んだんです。それを、何をしているのかわからなかったわけです。また一週間か10日ほどして、別の計画が行われました。そこの人が収穫に行って、気がつくわけです。それぞれのカノーラ畑に30フィートほどに渡る円い点が付けられている。そこのカノーラは枯れてしまっているんです。ここでやっとその農家は、モンサントが(小型のスプレー爆弾を持ってるんです)スプレー爆弾を使ったことを知るわけです。彼らは農家の畑の上空へ行ってそれを落とす。もしそこのカノーラが枯れたとすると、そこではGMカノーラが栽培されていないことがわかるというわけです。そして、もし枯れなかったとしたら、その農家のついているうそがバレるというわけです。この程度のことは、彼らはするんです。

 

みなさんに注目していただきたい事柄がいくつかあります。基本的には、GMの争点には3つあります。第一に、私の関わっている問題;特許権対所有権、つまり世界中どこでも、自らの種子を使うことができるという農家の権利です。それが私の言いたい点です。第二に、GM食品の健康と安全性です。そして第三に、環境へのダメージ。それらのことについて、大雑把に触れておきたいと思います。

 

ご承知のように、カナダにも、米国にも純粋なカノーラの種子など存在していません。すべて汚染されています。同様な大豆の種子についても存在しません。これも汚染されているのです。

 

それでどうなんでしょう? 今となっては、北米の有機農家たちは、有機のカノーラ、あるいは有機大豆を作ることはできません。すべてが汚染されてしまっています。ふたつの作物が彼らの手によって奪われたのです。私たちの市場ですが、欧州へはカノーラは売れません。この汚染のために、農家のこうむる経済的損失は計り知れません。有機農家は作物を売ることができないんです。米国のコーンやスイートコーンの生産者は、失われたセールスで概算10億ドルを損失しました。これらのことは経済的に起こっていることの一部です。

 

完全に封じ込めることなどできません。ロドニーが言ったように、花粉は風だけによって移動するわけではない。花粉は動物の毛や鳥の羽根、自動車からも振りまかれるんです。だから、封じ込めるなんてできない。モンサントは「我々は広い幅を保つ緩衝帯のある試験ほ場を確保します」と言うけれども、封じ込めるはずがないのです。

 

世界中の農家に訴えてきたことは、そのような契約を交わしてはいけませんよということです。自らの種子を使うという権利を絶対に放棄してはいけません。もしそうしたら、彼らは大地の奴隷と化してしまうでしょう。それが、自家の種子の調達を守ってゆかなくてはいけない理由です。いくつかの世界の優秀な種子、作物は、科学でもなければ研究者よって作り出されたわけでもないんです。モンサントのような会社の手に握られた種子の供給の統制を許せば、そのような創造活動は失われてしまうでしょう。

 

 ■

 

環境においてはとどまることがありません。ミツバチについても、どれがGM作物なのかどうかなんて解らない。その結果、今では我々のハチミツはGMで汚染されてしまっているため、欧州向けのものは切り捨てられてしまいました。ドイツの学者は、GMはすでにミツバチそのものに入っていることが確認されたという研究報告を発表しています。それがどんな影響を持つかはわかりませんが。カノーラと大豆に除草剤をかけるとします。他に綿とスイートコーン、2種類の作物があるとします。Bt毒素を組み込んだ作物を作るとします。そのコーンや油を食べるということは、殺虫剤を食べることになるんですよ。農家はGM作物に農薬をかけ続けなくてはならない。モンサントは「減農薬」といっても、実際は除草剤をもっと使ってしまうわけです。それがGMカノーラとGM大豆の特徴なんです。モンサントは特定の除草剤に作物を順応させた。さらに、コーンとカノーラにも、Bt毒素を組み込んだんです。

 

食品の健康と安全性についての包括的な問題についてです。私はGM食品、とくに米国で栽培されているBtポテトの健康や安全性を考察したり、検査に力を注いでいる多くの学者たちと一緒に世界中をまわりました。Btポテトでは、とくに子供や幼児の大腸の中の成長細胞を通常より早く成長させ、ガンを誘発することを彼らは突き止めています。いまや、カナダで農業に関わるいちばん大きな病気または死因はガンです。それは直接農薬に関連していると思うんです。にもかかわらず、BtなどのGM食品が食べられているわけです。

 

世の中で、GM食品が安全であるとまじめに評価しているような報告など、ひとつもありません。しかしながら、現在GM食品について危険であるとしっかりと指摘している報告がふたつ、スイスとスコットランドから出されています。

 

責任の問題。私は何度も「GMには全面的に反対ですか?」と尋ねられるとすると、私は「お答えするのはむつかしい」と返事をするんです。私たちはみな技術の最先端にいるべきだと考えます。しかし、遺伝子組み換えについては・・・、何の価値があるのでしょう。もし環境に何か生命が放たれたとすると、それは他の農家の所有物をだめにしてしまうということ。それは正しいこととはいえません。

 

私たちは新しい行動指針とリスク評価、予防法やその指針を採用すべきだと思います。そしてあわててはいけない。そのことがGMの包括的な問題に関して、私たちが対処しなくてはいけないことなのです。だから、そのときが訪れるまでは、私はGMには反対です。

 

 ■最終回■

 

収入の損失に対する債務の問題。これが、私どもが(モンサントに負わすことのできる)問題であり、それが訴訟の目的です。「あなた方が特許をお持ちになるのはけっこう」。でも先ほど申し上げたとおり、だからといって他人の財産を台無しにする権利はありませんよ、ということです。

 

私の話を締めくくる前に、もういくつか挙げておきましょう。私が申し上げたのは、品質が落ちる、農家の受け取る価格が落ちる、利益が落ちる、市場は狭くなる、栽培できる作物が減る。そしてモンサントからの認可、ライセンスがいる。というような事柄もですが、なんと言っても食べ物の安全性ということが私の言いたいことなのです。これは非常に重要なことです。

 

カナダでは、この4年間のうちに、モンサントはカノーラの新品種をいくつか発表しました。1997年のモンサントのカノーラには、人の健康に危険な無用の遺伝子が含まれていました。おかげで何百万ドルもの、巨額な回収となりました。にもかかわらず、農家の中にはすでに作付けしてしまっていたところもあったのです。カノーラはユニークな特徴があって、まいた種全部が同時に発芽するわけではありません。カノーラの種子は、10年間もの間、土の中で眠り続けることができてしまうんです。それらの何がしかはいまだに土の中にあるんですが、その結果がどう出るのかについては誰も知りません。

 

もっとも危険なことが2000年に起きています。モンサントはカノーラの新種を作り出したのですが、一部の農家に販売してしまってから、また私たちの州の南部ではすでに播種してしまった農家もあったのです。またもや、人の健康に有害な遺伝子が含まれていたことを知らされたのです。そしてこのときにも膨大な回収ということになったのです。

 

もし、モンサントが管理された研究所内で自らの製品をコントロールできないならば、環境においては一体何が起こりうるでしょうか。もう一度言いますが、現在、スーパー雑草が出現しているんです。今から15〜17年前にモンサント社が唱えた、飲んでも安全、食塩よりも安全というラウンドアップ除草剤についての、有力な報告がなされてきています。モンサントに農家が教わったことはこういうことです。

 

ロドニーが指摘したように、PCB、DDT、2−4D、オレンジ剤(枯葉剤)は安全であると言われていたんです。そして今や、ラウンドアップは、北米での農業関連の病気で第3番目に大きな原因なんです。ガンも含まれていますし、おもな原因のひとつです。

 

例を挙げてみましょう、私の住んでいるところでは、農業をしているお隣は一人もいないんです。みんな亡くなりました。私の隣人たちは(声を荒げて)ガンで亡くなったんです。(間をおいて)私たち農家が深刻なほどに関わりつつあることなんですよ。20年ないし30年、40年間、農薬を使い続けてきた結果がそれなんだ、ということなんです。

 

じゃあ、私はどうかというと、今70歳であとどれだけ余生があるかなんてわかりません。そして私は私の子供や孫たちに残してやりたいものがあるんです。私には5人の子供と、14人の孫があります。彼らに、毒された大地と食べ物を残してやりたいとは思いません。私は彼らに、安全な大地と食べ物を残してやりたいと思います。

 

みなさんにこのメッセージを送る機会を持つことができて、ほんとうにありがとう。

 

(拍手)

記述:Paul Goettlich