GM食品は人や動物に安全か?

アーパッド・プシュタイ、

20016

訳 山田勝己

 

極めて少ない安全性試験

安全性に関してこれ程少ない情報しかないのに、一般市民はどうやってGM食品を理解して判断が下せるのか。データがないのは次のような理由による。

作物由来の食品の場合、単独の化学物質、薬品、添加物に比べて評価が難しい。作物はより複雑で、成長の仕方、農法によって成分が変わってくる。 GM食品の毒性に関する出版物は殆ど無い。「組み換え食品の健康危害は:意見は沢山あるがデータは殆ど無い。」と言う、サイエンス誌の記事がこれをうまく表現している。事実GM食品の影響を臨床的に調査したものを専門家が診査したものは一つもない。動物実験もあまりなく、あってもわずかだ。推進企業が好んで使う手法はGMと非GM作物の成分比較である。極端に違わない限り「実質的に同等」とする。従ってGM食品作物は、従来品と変わらず安全とされる。こうすればGM作物が動物実験無しに種苗登録できる。だが、実質的同等性というのは科学的に適切な定義をされたことが無く、どう定義すべきかの法的ルールもない。 

食用作物が遺伝的に組み換え(遺伝的に組み換えられたというのは誤用)された場合、一つ以上の遺伝子が作物のゲノムに組み込まれたことを意味し、最低限ウィルスプロモーター、暗号ターミネーター、抗生物質耐性マーカー遺伝子、レポーター遺伝子を含む種種の遺伝子を持つベクターを使っている。これらの安全に関わる物のデータは少ない。

例えば;

DNAは消化器官で必ずしも完全に分解されるわけではない。腸内細菌が遺伝子やGMプラスミドを取り込み抗生物質耐性を拡散する可能性がある。ゲノムへの遺伝子組み込みは意図しない結果を生むこともある。 これらは、組み込まれた遺伝子の発現の仕方や作物自体の遺伝子機能への影響が予測できないから、(組換え体の中から比較的原種と違わないものを)選抜することで減らすか無くさなければならない。分析できず選抜を極端に限定してしまう未知の毒物やアレルゲンを作り出す可能性もある。

現在、食品の毒性はマクロ/ミクロの養分を化学分析したり、既知の毒によって検定する。 これだけに頼ることは最善でも不適切、最悪の場合危険である。mRNAフィンガープリント法、プロテオミクス、代謝副産物プロファイリング等のもっと適切な解析法が必要である。 だが、高い生物活性を持つわずかな成分が、内臓や人体の代謝に強い影響を及ぼす可能性がある。これは動物実験でしか確かめられない。従って、GM作物を食物連鎖に入れる前に、人体・動物の健康に有害な結果をもたらす物を特定して除去する新たな毒性学・栄養学的手法が緊急に必要だ。

 

商業GM作物の安全性試験

GMトマト:

安全評価がなされた最初で最後のGM作物、フレーバー・セーバートマトは、FDAの要求に対しカルジーンが指定した物だ。GMトマトはアンチセンス法によってトマトの遺伝子にkanr遺伝子を組み込んだ物。 試験内容は公表されず、検閲もされなかったが、インターネット上で見られる。 結果は、総蛋白量、ビタミン、ミネラル成分、毒性のあるグリコアルカロイドに関して大きな変化がない。従って、親株とGM株のトマトは「実質的に同等」であると考えられる、とある。

ジュースにしたGMトマトをチューブで与えた雌雄ラットに対する急性毒性試験では、毒性を示さなかったとある。そして、体重や臓器の平均重量、体重増加、消化、臨床化学物質、血液パラメーターは特にGM給与群と対照群では違いがなかったと結論している。だが、実験開始時のラットの体重のばらつきが大きく(18−23%)この結果は無効である。対照群には見られない胃部に軽度/中程度の浸食性・壊死性の病変が20匹中7匹の雌ラットにあるのに組織検査が行われていない。にもかかわらず、問題無しとしている。      人間であれば、特に年輩の人が血栓症予防にアスピリンを使用している場合、致命的出血を起こしうる。GMトマトを給与されたラットの40匹中7匹が2週間以内に死んでいるが死因は書かれていない。この実験計画は不十分で、フレーバーセーバーは安全だとした結論は良識ある科学に基づいていない。FDAが今後他のGM食品についての毒性試験は必要なしとした決定は、その正当性に疑問がある。

 

GMトウモロコシ: 

フォスフィノスリチン・アセチル・トランスフェラーゼ酵素(PAT−蛋白)を発現させた、Chardon LL除草剤耐性 GMトウモロコシの2系統は、サイロに貯蔵する前後で脂肪分と炭水化物成分が非GMの物に比べて大きな違いがあり、実質的な違いがある。毒性試験は、遺伝子伝達、ベクター、遺伝子挿入による予測できない影響は立証できないし除外もできないにも関わらずPAT−蛋白質のみで行われている。実験計画自体にも欠陥がある。実験開始時のラットの体重が20%もバラツキがあり、それぞれの食餌量が記録されていない。PAT−蛋白質の変換効率が著しく落ちている。尿の量が多くなっており、臨床的パラメーターも違っている。体重測定と消化器官(それと膵臓)の組織検査が行われていない。従ってPAT−蛋白質を発現するGMトウモロコシは、受け入れがたい健康危害があり得る。 

 

成分分析について

GM大豆: 

大豆に除草剤耐性を付与するため、アグロバクテリウムの5エノールピルビルシキメート3燐酸シンターゼ遺伝子が使われている。 安全性試験では、GM品種が従来品種と「実質的に同等」であるとなっている。 同様にGTS(グリフォサート耐性大豆)にこの除草剤を散布した物も安全だとしている。しかしGMと従来品の間には大きな違いが何点も記録されており、統計手法も欠陥がある。

各GTSと親系統を同じ場所で同時に生産、収穫してサンプル量も十分に用意して成分比較をしたのではなく、別の場所で穫れた収穫時期も違うサンプルを比較している。天然イソフラボン(ジェニステイン等)の量も健康に影響が出るほど違いがある。そして、トリプシンインヒビター(典型的アレルゲン)の量がGTSでは非常に増えている。この理由と大きなバラツキ(10%以上)のため、この系統は「実質的に同等である」とは言えない。 

 

 

 

GMポテト:

GMポテトに関して発表された物では、唯一大豆のグリシニン遺伝子を発現した物が専門家の検証を受けている。しかし、発現レベルは非常に低くて蛋白質量も増えていないし、アミノ酸特性も出ていない。

 

GMライス:

大豆のグリシニン遺伝子(40−50mgグリシニン/g蛋白質)を発現するタイプの物が開発され、蛋白量が20%向上したと言っているが、増えた蛋白質は水分が減ったせいで、実際に蛋白質が増えたためではないと考えられるのでこのGM作物自体の意義が疑われる。

 

GMコットン: 

鱗翅目害虫に対しより効果のあるBt亜種クルスタキ(kurstaki)の遺伝子を用いて開発した数系統のGMコットン種は、主要な栄養素の濃度やゴシポールでは、親系統と「実質的に同等」であり、サイクロプロペノール脂肪酸とアフラトキシンの濃度は在来品種よりも低いとなっている。 だが、使っている統計手法が不適切で、とくに環境のストレスがアンチニュートリエント/毒素レベルに予測できない影響があるので、GM系統と非GM系統が本当に同等か疑わしい。

 

 栄養学的/毒物学研究

除草剤耐性大豆:

ラット、鶏、ナマズ、乳牛でグリフォサート耐性のGM大豆2系統について栄養価と毒性についての試験が行われた。成長速度、餌変換効率、ナマズフィレ肉成分、ブロイラーの胸肉と脂身の重量、泌乳量、ルーメン発酵と消化性においてGTSとnonーGTSで似た結果になったとあるが、実験内容が貧弱である。  まず食餌中の蛋白価が高い上、含まれるGTS(組換え大豆)の量が少なすぎてGMの影響がマスクされてしまう。各個体毎の食餌量、体重、内臓重量が出ていない。膵臓の鏡検がいくつかあるだけで細胞検査が全く行われていない。片方のGTS種がもう一つのGTS種よりも極めて成長が良く、両種の飼料価値が実質的に同等とは言えない。ブロイラー試験は、商業的で科学的ではない。ナマズ試験でもGTSの一つが別のに比べて飼料価値が高く出ている。乳牛の乳生産量と成績ではGMで給餌したものと非GMで給餌したものでは明らかに違う。その上、大豆にグリフォサート耐性を与える5エノルピルビルシキメート3燐酸シンターゼの安全性試験では、チューブ給与試験にGTS産物ではなく大腸菌産物を用いていて関連性がない。組換えによる違いが腸内蛋白質分解の安定性を阻害するのでその影響は変わってくるはずだ。

従って、GTSと非GTS種で飼料価値が実質的に同等と言うのは、良く言って早計である。別の試験で、ラットとマウスの食餌中30%の加熱GTS大豆若しくは非GTS大豆を与えたばあい、栄養的な違い、臓器重量、組織病理、IgEIgG抗体の生成で、特に大きな違いがなかったとなっているが、実験は生理的に正常で無い、つまり殆ど飢餓状態で行われているので、正常な標準的成長量は5−8g/日なのにラットでは0.3g以下、マウスでは全く成長していない。正当性のある結果は出よう筈がない。

 

 

 

GMコーン:

ブロイラーへのBT由来のEvent176(ノバルティス)コーンによる分割(ration)給与試験が発表されたのが一つあるが、この実験結果は商業目的で学術的科学的な研究ではない。

 

GMエンドウ豆:

アルファ・アミラーゼ・インヒビターを発現するGMエンドウをラットの食餌中にそれぞれ30%と65%与えた場合、栄養価は、親品種のエンドウ豆と類似していたとある。65%レベルでも違いが少ないのは主にエンドウに発現しているアルファーアミラーゼ・インヒビターがラットの内臓で直ぐに消化されて、栄養阻害効果が無くなるためだ。残念ながら、内臓の組織検査は行われていないし、リンパ球感応性も測定されていない。盲腸と膵臓など内臓の重量は違うものもあるが、他の臓器は驚くほど類似していて、農場で家畜に低量から中量で状況を観察しながら与えても大丈夫なようだ。しかし、人間に対する安全性を言うにはより厳密なリスク評価を何種類かのGMで行う必要がある。

まず、栄養学的・毒性学的検査を実験動物で行い、全く害が認められなければ、2重盲検法、プラシーボタイプの臨床試験を人間のボランティアに行う。この場合、特に幼児、老人、障害者に顕著に害が出やすいことを留意して行う。

このような検査のプロトコルは2000年2月のOECDエジンバラ会議で提起され、その後出版されている。

 

GMポテト:

大豆のグリシニン遺伝子を発現させたGMポテトの安全性を見るために短期の給与試験がラットで行われ、体重1kg当たりGMポテトと対照ポテト2gを強制給与した。成長量、飼料摂取、血球数と成分、組織重量は両者で違いがなかったが、ポテトの摂取量は少なすぎるし、ポテトが生なのか煮た物か不明瞭。 

Bt亜種クルシュタキCry1毒性遺伝子で組み替えられたポテト又はBt毒自体をマウスに給与した結果、絨毛上皮細胞の肥大と多核巨大細胞が発生し、微絨毛、ミトコンドリアの退化、リソソームと自食性小胞の増加、クリプト小胞パネート細胞の高活性化が見られる。結果から見ると結論とは逆にCry1毒はマウスの内蔵で安定しており、これを発現しているGM作物は販売前にリスクを避けるために周到な検査を行う必要がある。

別の実験では、若い成長期のラットに、生又は煮た非GMポテトとマツユキソウ(Galanthus nivalis)の球根ペクチン遺伝子(GNA)を組み込んだGMポテトを混ぜた等価蛋白と等価カロリーのバランスのとれた餌を与えている。その結果、GMポテトを与えたラットの胃の粘膜の厚さと腸の陰窩長(crypt length)が明らかに増化している。これは組み換えによるもので、非細胞分裂性レクチンを増殖性腸成長やTリンパ球の上皮浸潤が起こらないように選択したGNAのせいではない。この実験については異論もあるが、このランセットの論文への批判の多くは個人的なもので、専門家が検証した物ではないので、科学的価値はあまりない。しかしながら実験結果は、専門家が検証している専門書に発表され、批判にも答えている。だが、この実験は、追試験されていないし、結果も矛盾があるので、同様のGM技術やベクターを使った作物は全て、食品として出す前に、内臓や代謝への影響を周到に調査が必要であることは言うまでもない。 

 

 

 

GMトマト:

BtCry1A(b)を発現したGMトマトの研究は、本の中で出版されたもので、科学専門誌で発表されたものではない。しかし、Bt毒が試験管中で人や赤毛猿からの盲腸/結腸に結合するということが免疫化学的に実証されその重要性が強調されている。ラットの生体中の内臓ではBt毒は結合していないが、これは著者がBt毒の組み替え体を使ったためと思われる。

 

アレルギー調査

GM食品の大きな健康不安に表示のないGM食品を摂取するとアレルギーとアナフラキシーが増えるのではないかというのがある。

アレルギー性があると分かっている作物からの遺伝子であれば、その作物に過敏反応を示す人の血清を使ってRASTや免疫ブロット法を用いれば、試験管テストでGM食品がアレルギー性があるかどうか簡単に見分けられる。これはブラジルナッツの2S蛋白を発現しているGM大豆や 鱈の蛋白遺伝子を持つGMポテトで実証されている。また遺伝子操作が内因性アレルゲンを刺激するかという評価も比較的簡単である。 Bt農薬に曝される作業者の中には、Bt胞子の抽出物に対しIgE抗体や皮膚過敏が起こる者がいる。彼らの血清を使えば、Bt毒を発現している作物のアレルギー性を試験することは可能だろう。特にCry1Acは最近、口腔/鼻腔の抗原性又は助抗原(adjuvant)性があることが分かったのでなおさら重要だ。

GM食用作物のアレルギー性は、これまで食用とされたことのないものからの遺伝子であったり、アレルギー性の未知のものや遺伝子移入/挿入の際に新たにアレルゲンや補助アレルゲンが出来たり、弱アレルゲンが強く発現した場合、評価が難しい。栄養学的・毒物学的動物実験モデルは良いものがあるが、アレルギー性試験にはそのようなモデルは残念ながらない。

今のところ、既知の200近いアレルゲンと短い相同配列(少なくともアミノ酸8個が隣接しているもの)を確認するというような間接的で科学的に健全でない方法でしかアレルギー性の評価が出来ない。間接的と言っても、組み換えによって発現した蛋白質の要素(大きさや安定性など)で意志決定ツリーを使うなどはもっと不健全だ。特に腸内蛋白質分解の安定性は、体内(人間・動物)試験ではなく、試験管(模擬的)テストで見られているが、これは基本的に間違っている。 また、殆どのアレルゲンが大量に存在する蛋白質だという観念も誤解を招きやすい。例えば、鱈の主要なアレルゲンであるGad c 1は、そんなに多くはない。 しかし、アレルゲンとして分かっているアルファアミラーゼ、トリプシン、インヒビター、米のアレルゲンなどの遺伝子は、クローンを作ったり配列を変えることでそのレベルをアンチセンスRNA法で下げる道が開ける。

信頼性のあるアレルギー性試験がない現状では、人や動物の食糧・飼料として利用される前に、新しいGM作物がアレルギー性を持つかどうかを確実に決定することは不可能である。

 

結論

GM食用作物の健康に対するリスクについては、当然導入前にテストして除去されなければならないのだが、意見は多くあるがデータは乏しいと言うことを認めざるを得ない。現状のデータベースは、嘆かわしいほど不適切だ。その上、これまで発表されたものの科学的水準は、要求される基準に達しないものが殆どだ。   宣伝されているように、我々の未来がGM食品の完全で豊富に栄養価が高く安全なものをもたらすという遺伝子組み換え技術の成功に掛かっているとすれば、現在の荒っぽい遺伝子組み換えでは未だそのような恩恵はもたらされておらず、優秀たるべき第2世代の約束も未だ未来のままというのが逃れようのない結論だ。 GMと非GM作物のわずかな違いは、生物学的に意味が無いと主張するものもいるが、殆どのGMとその親系統作物では「実質的同等」の定義に当てはまらないのは明らかだ。いずれにしても、これまでの実用性よりも、この粗削りで不明瞭な非科学的概念が一人歩きをしてしまった。だから、この技術を適切な科学的基盤のもとに置き一般の不安を和らげるつもりならば、GMとそうでない作物の成分、栄養学的/毒物学的、代謝の違い、そしてGM作物を開発するのに使われた遺伝子工学の安全性を探る新たな手法とコンセプトが必要である。もっと科学する必要があるのであって、減らしてはいけない。

 

 

筆者について;

プシュタイ博士はハンガリー生まれ。ブタペストで化学の学位を取得し、生理学学位と生物化学の博士号をロンドン大学で取得している。50年近い経歴は、ブタペスト、ロンドン、シカゴ、アバディーン(ロウエット研究所)で大学と研究所での勤務である。彼は専門家の検閲を受けた300近い論文を出しており、科学の本を書いたり編集をしている。ここ30年間は、GM作物の組み換えによって発現したものも含む食事中のレクチン(炭水化物に反応する蛋白質)の胃腸への影響調査をしてきている。プシュタイ博士は、見解の相違からローウェット研究所との契約が更新されなかったので、自分のGMポテトに関する研究を世界中で講義してきており、GM食品の健康への影響調査を始めようとする団体へのコンサルティングを行っている。

 

 

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