米欧専門家会議が、遺伝子組み換え作物に関して政府は新たなルールを作るべきだと勧告。
2000年12月20日
CNN.com 健康と食品ライター
Troy Goodman記者
(抄訳)
アメリカとEUのバイオテク専門家会議は、遺伝子組み換え作物に関して、バイオテク食品についての科学者(複数)による最初の包括的なレビューが発表されたのをうけて、表示義務化を含む新しいルールを作るべきだと、政府に勧告した。「消費者には自分たちが食べたいものについて知った上で選択する権利がある」と20名からなる専門家会議メンバーは云った。また、専門家パネルは、「新しい遺伝物質を含む食品について、参加各国は納得ずくで表示義務を課すべきである」と表明した。
lGM作物のリスクと利益について。
アメリカとEU のメンバーは遺伝子組み換え食品について、今は表示を求めていないが、表示すべきだという提案は考慮されつつある。当分、EUは一歩すすめて、新規の遺伝子組み換え作物の承認にたいするモラトリアムを行う。
政府に対する勧告は、科学雑誌「サイエンス」に発表された灰色の報告書に原因がある。この報告書では、遺伝子組み換え作物はリスクも利益も潜在的に可能性がある、としている。世界中の作物のDNAを変えることで、どのような生態学的破局を迎えることになるのか、科学者達にはまだ分からない。「これまで発表されている科学文献をレビューすれば、環境にたいするリスクに関しても利益に関しても、決定的な実験は行われていない」と「サイエンス」の論文の共著者でもある生態学者のLaReesa Wolfenbargerは云った。もう一人、アメリカ最大の非営利民間科学財団のアメリカ科学振興協会の科学者Paul Phiferも同じ意見である。
「サイエンス」の著者らは「生態系の複雑さは、遺伝子組み換えのリスクと利益を評価するには相当の研究が必要で、それでも不確実性は避けられない」と書いている。要するに、遺伝子組み換え作物の評価は複雑で、特定地域に植えた特定の作物に関してさえリスクは様々で、データ集めは時間のかかる困難な作業であろう。そうした評価方法自体、まだ生まれたばかりの赤ん坊だと金曜日に発売された「サイエンス」は述べている。研究者たちは、除草剤耐性の超雑草の出現をチェックできる試験方法や、土壌の化学成分の変化を測定できる方法が必要だとしている。
l人間にたいするリスクはまだ不明である。
Wolfenbargerによれば、レビューした35の科学論文はいずれも他の科学者がみても出版価値のある充分高い質のものばかりであった。この報告書では、これらの論文の中に遺伝子組み換え作物を人間が食べても安全だという研究をみつけることは出来なかった、と述べている。そうした人間に対するリスクの研究データはほとんどなかったからである。科学的不確かさにたいする懸念は、先週開かれたアメリカとEUの専門家会議でも出された。EU当局者とEU議会関係者は、遺伝子組み換え作物に関するルールづくりと表示を勧告する予定である、と金曜日(15日)にアナウンスした。
この提案とサイエンスの報告書の背景には、スターリンクが人間にアレルギーを起こすかもしれない、という消費者の懸念による不信感がある。専門家達はまた、作物、種子、食品に関する既存の規制を改正すべきだと断言した。
lいかなる価値が?
遺伝子組み換えの期待される利点として、収量増と除草剤や殺虫剤の使用量の減少、栄養価の高い作物生産、などがあげられている。こうした約束はしかし、「サイエンス」の論文の研究によればまだ証明されてはいない。なぜなら、遺伝子組み換え作物の利益自体をテーマにした研究はまだ不足しているからである。「利益があると言えるかどうかは微妙だ」と論文の著者らは述べている。