提 言


遺伝子組み換えの問題は『農』をぬきにして考えることはできません。『農』とはいうまでもなく、私たちの『食』の基本です。

さらに『食』とはいうまでもなく、わたしたちの健康の基本です。つまり、わたしたちの健康は『農』によって守られている。

『食』の安全性が問題になっています。どのようにしたらわたしたちの健康は保たれるのか。この答えは『農』に求められることになります。では『農』とはいったいどういうものなのでしょう。

『食』とおなじく、『農』も文化です。このふたつの文化はこの日本においては、何千年もかけて改良され、受け継がれてきました。いわばいまさら変えることがむつかしい文化です。

『身土不二』の言葉があらわすとおり、わたしたちはその風土に合った『食』文化を守ってこそ、健康が保たれるのです。

遺伝子組み換え作物という本来ありえない形質を与えられた生物。それが自然環境とそれに根ざすわたしたちの健康に何らかの影響を与えないという確証はありません。ただ、何かの合理性のみを求めた商品にほかありません。そこでは安全性は最優先されてはいないのです。

『食』と『農』、この両者は現代にあっては『消費者』と『生産者』という立場で考えることができます。

わたしたち『消費者』と『生産者』は今ここに同じ舞台に立って、遺伝子組み換え作物について考え直してみる必要があるのです。

遺伝子組み換え作物の問題点

@
その安全性が100%確認されてはいない

A
生産現場での作付・収穫・調整・保管・流通いずれをとっても交雑・混雑の可能性を否定できない

B
安価なGM穀物が一般流通した場合、流通段階でのGM品種の不正混入は必至であり、GM汚染による市場の混乱が避けられない

C
GM作物が栽培された場合、国土の狭い日本では交雑などにより、周囲の環境に深刻な影響を及ぼす危険性がある。GM混入を許さない有機農業にとって死活問題となる。

D
BSEの事例のように、農家、食品製造加工業者、流通業等に対する経済的な損失を与える原因となるばかりか、信頼失墜にもつながりかねない

E
『知的所有権(生物特許)』の発生により、GM作物の栽培はバイテク企業との契約がなければできません。その結果、GM種子は独占支配される結果となる。

以上のようなことを、現実のものにしてしまうという可能性を、遺伝子組み換え作物は持っています。いまやGM作物は、それを推進する大国にとって、経済的戦略として明確なものとなっています。

日本の食糧自給率は40%と落ち込んでいます。食文化の要である『農』の部分で経済支配を受けているという現実が、GM作物の日本進出により、さらに大きな重荷としてのしかかってくることは間違いありません。

少なくとも日本の食糧自給率を向上させ、安全な農産物、食品を確保するためには『農』を文化としてとらえ、発展させてゆく以外に方法はありません。

そのことが、日本の、さらには世界の自然環境の維持、回復に直接つながってゆくということを、わすれてはいけません。


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