北海道農業研究センターの酸性土壌耐性イネについて


河田昌東(遺伝子組み換え情報室)
農水省生物資源研究所との共同研究である
農水省の一般圃場栽培の認可を申請したのは、農業資源研究所である
試験は開放圃場で行われる
イネの品種は「キタアケ」
導入遺伝子はトウモロコシのC4PEPC(C4型ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ)という酵素の遺伝子
注:
この酵素は糖を分解し、エネルギーを生産するTCAサイクルに関わる重要な酵素で、全ての生物が持っている。ブドウ糖が分解して出来たホスホエノールピルビン酸に炭酸ガスと水を加えて、オキザロ酢酸を合成し、これがTCAイクルの中で分解し、エネルギー源として利用される。
即ち、炭酸同化作用に大きな役割を持つ。この酵素は、炭酸同化作用の他に、気孔の開閉、種子の形成などに幅広く関わっているが、この酵素が何故酸性土壌耐性を与えるかは不明。この酵素が増加すれば、光合成と糖代謝が活発になると思わる。
その他、組み換え体の選択マーカー遺伝子として2種類の抗生物質耐性(カナマイシン・ネオマイシン耐性とハイグロマイシン耐性:どちらも大腸菌由来)が入っている。ハイグロマイシンはイネの中でも発現している
遺伝子組換えの方法は「アグロバクテリウム法」。使ったベクターは、 PIG121HmにC4PEPCを組み込んだPIG121Hm−PEPC。したがって、ここで使われているプロモーターはカリフラワーモザイク・ウイルスの35Sプロモーターで、ターミネーター配列は、よく使われるNOS3'である。
その他に、遺伝子発現マーカー(レポーター遺伝子とも言う。植物には存在しないので、導入遺伝子が植物で発現しているかどうかを検出するために使われる。発現していれば特殊な試薬で植物組織が青く染まる)であるGUS遺伝子(βーグルクロにダーゼ遺伝子:大腸菌由来)が入っていると思われる
北海道農業研究センターはこの他に「縞はがれ病耐性イネ」「耐寒性イネ」の研究も行っています