除草剤耐性(バスタ:グルフォシネート耐性)の試験紙について


河田昌東(遺伝子組換え食品を考える中部の会代表)
2023/07/04

先般来、GМナタネの検知紙について色々問題になっています。特に、バスタ耐性(LL)の試験紙がうまく出ない、という結果が出ています。それで調べた結果をご報告します。

(1)除草剤グルフォシネート耐性は細胞中のアミノ酸グルタミン合成酵素を阻害し、細胞中にアンモニアが蓄積するために枯死する。これを耐性化するために、グルフォシネートをアセチル化して不活性化する酵素(PAT:フォスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ)という酵素を作る遺伝子を入れて除草剤耐性にする。
(2)現在、遺伝子組み換えに使われているPATタンパク質を作る遺伝子には2種類ある。
Streptomyces viridochromogenes からとった遺伝子(pat)とStreptomyces hygroscopicus からとった遺伝子(bar)である。両者はどちらもPAT蛋白質を作るが、両者は若干構造が異なる。
どちらも183個のアミノ酸からなる蛋白質だが、アミノ酸配列が若干異なり、87%の類似性がある。

(3)GМナタネの場合、bar遺伝子を使ったものしか開発されていない。pat遺伝子を導入したものは、グリフォシネート耐性大豆や綿で使われている。GМ綿ではどちらの遺伝子を使ったものもある(LL25:Liberty Link社と281-24-236・3006-21-23:WideStrike社)。

(4)綿のグリフォサート耐性(barとpat)を比較した研究(*)によると、bar(LL)はPAT蛋白質を沢山合成するが、pat導入株では遺伝子のスイッチであるプロモーターの働きが弱く、PAT蛋白質濃度は極めて少ないが、グルフォシネート耐性機能は十分ある。

(結論)
最近GМナタネ用に新たに導入した除草剤グリフォシネート用検知紙はpatの検出用であり、ナタネでは利用できない。

(*1) Caio A. Carbonari et al: Resiatance to glufosinate is proportional to phosphinothricin acetyltransferase expression and activity in LibertyLink and WideStraike cotton.: Planta(2016) vol.243,p925-933

(*2) Marc Van den Bulcke et,al; Detection of genetically modified plant products by protein strip testing: an evaluation of real-life samples.; Eur Food Res Technol.(2007) vol.225, p49-57.



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