2020年春は目視のみの調査
2021、22年春は自主調査のみ


国道23号、赤線の区間が今回の抜取隊エリア
遺伝子組換え食品を考える中部の会では、2023年4月16日、第26回遺伝子組換えナタネ抜取隊を行いました。
コロナ禍の影響で、市民のみなさまの参加を得ての抜取隊は、2019年の第22回以来4年ぶりとなりましたが(23〜25回は未実施)、当日の活動に必要な参加人数を得ることができました。あらためて、みなさまのご協力に深く感謝します。

左の地図のとおり、国道23号四日市市『松泉町』交差点より、津市『藤方』までの31kmの間で、ナタネの自生が目立つ、赤線で示した区間(12.2km)をA〜Hの8班に別け、各班を4〜5名とし、ナタネの抜取りを行いました。

今回の調査では、中央分離帯でのセイヨウナタネ抜取りはせず、確認のみとしました。したがって、抜取本数は実際の数より少ないものとなっています。

その結果、A〜H班全体で246本のナタネを抜き取ることができました。
抜取隊の実施時期について
ナタネの開花時期に抜取隊を行なうことで、種子結実→自生拡大を防ぐことができます。4月初旬に抜取隊を行うのはそのためです。
雑種ナタネについて
4月初旬では雑種ナタネの確認は難しく、交雑後さらに成長し、その特徴が明確になる時期は6〜7月ころとなります。雑種ナタネの調査もその時期にあらためて行なっています。
その内訳は、246本のうちセイヨウナタネ243本、雑種とみられるもの2本、カラシナ1本。
以上の中から、検査用サンプルとして、セイヨウナタネ67本、雑種ナタネ2本を選抜し、検査用試験紙によるGМ判定をおこないました。
その結果、セイヨウナタネ67本中、で除草剤ラウンドアップ耐性が12本(RR陽性率:17.9%)、除草剤バスタ耐性が37本(LL陽性率:55.2%)でGМ陽性率73.1%。雑種ナタネ2本はいずれもRR陽性で陽性率100%という結果でした。
今回、簡易検査した検体の中から、B-3、B−6、B−8(いずれもLL陽性)、C−7(LL陽性)、E7−2Z(雑種・RR陽性)の5検体を、農民連食品分析センターにPCR検査を依頼したところ、いずれも簡易検査同様の結果が得られました。
今回のPCR検査について
 遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンより、検査料金を全額補助いただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

当日の結果
今回の抜取隊の実施にあたって
コロナ禍の影響下、4年ぶりの抜取隊ということで、参加メンバーの安全を最優先とし、とくに、中央分離帯での抜取作業はしないよう徹底しました。
そのため、今回の抜取隊でのセイヨウナタネの抜取駆除は、国道23号に沿った歩道での自生個体についてのみとなっています。
実際に、分離帯での抜取駆除がなされていれば、さらに抜取本数は増していたものと思われます。

GМ検査用試験紙については、新LLの試験紙が反応しないことがあらかじめわかっていたため、従来の試験紙(Romer 社製)を、種子ネットから取り寄せ、新試験紙(Envirologix 社製)でLL陰性となった検体について追試験しました。
国道23号、歩道での作業
抜取ったナタネの仕分け
検査会場でのナタネのGМ検査
河田さんのミニ講義
試験紙の比較
今回の抜取隊に使用したGМ判定用試験紙について:
現状として、GМ判定用試験紙が極端な高騰を見せています。その対応策として、今回の抜取隊では従来の Romer Lab.社と併せて、安価な Envirologix 社製も試用しました。

今回、Envirologix 社製も試用したのはA〜D班。各班共通して、次のような結果が得られました。
@:RR検出用 CP4 試験紙では、まったく問題なくGМ判定ができた。
A:LL検出用LLPAT 試験紙では、陽性反応を得られるものが1検体もなかった。
B:Aの場合、Romer 社製LL試験紙で30検体について再検査したところ、22検体で陽性反応が得られた。
C:従来の試験紙は縦半分に切ることで、1本を2本として使用することができたが、今回の試験紙では構造的に無理があり、それができない。
D:中部の会では、Envirologix 社製の使用はむつかしいと思われる。
A班
B班
C班
D班
E班
F班
G班
H班






今年から検査キットが大幅に値上がりした事をきっかけに、農民連食品分析センターで、代わりに使える検査キットを選び直しました。しかしながら、今回選定した検査キットにいろいろと問題が出てきたようです。
また、使い勝手についてもかなり違ったものとなりました。
詳しくは、検査手順の説明書(by 農民連食品分析センター:八田純人氏)を参照してください。

今回の Envirologix 社製LL判定用試験紙について
 農民連食品分析センター八田純人さんのコメント

今回の試験紙は、いろいろと厄介なことがあり、参っています。

まず、RR系の試験紙ですが、感度は、従来の試験紙に比べ、やや弱いように思います。
ただ、ナタネの葉をすりつぶすという今回の調査法では、検出に足る十分な性能はあると判断できます。

ただ、RRもLLも、今回の試験紙には、性能よりも、構造にやっかいな課題があります。
この試験紙はかなり華奢だということです。
このため従来の試験紙をカットして、1本を2本分に増やす、が難しい構造だと思います。→1/2カットはできない。

また試験紙は、ザックリ言うと、あのピンク色の試薬が塗ってある場所(いわゆる下のフワフワしたゾーン)が、従来の Romer製の試験紙より低く(短く)、試験管に入っている液量が多すぎたり、壁面に液滴があると、液の吸い上げに影響が出るようで、試験に失敗したりすることがあるようです(理由は添付の「壁の水滴に要注意」をご参考下さい)。この状態で試験をすると、試験紙下の部分が崩壊し、コントロールのラインすら出ないことがあります(つまり液がピンクの試薬を吸わずに上がってきている)。→ミニ試験管の葉っぱを砕いた液体の量を半分にする。

この辺のコントロールは、市民調査ではなかなか難しいと思うので、せめてもの対策にと、今回、キット化して、マニュアルと注意書きをお渡しして、対策をとってもらうことになっています。ご参考下さい。

LL系のナタネは、除草剤成分のグルホシネートに耐性を持っています。
この耐性は、遺伝子を組換えられたことによって植物体内に作られるPATたんぱく質の働きによります。

LL系の遺伝子組換えナタネには、この PATたんぱく質を作り出す配列は、bar遺伝子に由来する品種と、pat遺伝子に由来する品種の2つがあります。
どちらも同じ PATたんぱく質を作りますが、できあがる PATたんぱく質の構造的特徴は、微妙に異なるようです。
こぼれ落ちた種などに由来して自生しているGMナタネは、このbar配列をもつものと、pat配列をもつものがあると考えられます。

シェアとしては、bar配列を持っている品種の方が普及しており、結果、bar配列を持つこぼれ種のほうが、多いのではないかと考えられます。

これまでの調査で使用してきたLL系の試験紙は、bar遺伝子由来のPATたんぱく質も、pat遺伝子由来のPATたんぱく質も、検出できるものでしたが、今回、採用した試験紙は、pat遺伝子由来のPATしか検出できない特異的な性質を持った製品のようです。
こうした理由によって、今回の調査では、これまでの試験紙では検出ができていたPAT/bar系統のGМなたねは、検出できず見逃すことになります。

→LLの検査キットは、キャノーラのPAT/barは検出しないので、LLがマイナスの場合、従来のLLのキットで再検査して確認する必要がある。