中国のブタで今増えているヒト・パンデミックの可能性を持つ豚インフルエンザ


訳:河田昌東
Nature 速報:2020/06/29
by Jon Cohen
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世界が今必要としているのは新たなパンデミックの発生に対する対策である。したがって、中国のブタが今、ヒトにジャンプする可能性があるインフルエンザ株に頻繁に感染しているという新しい発見は、世界中の感染症研究者の大きな注目を集めている。

セントジュードチルドレンズリサーチ病院を最近引退したインフルエンザ調査官のロバート・ウェブスターは、この株が変異してヒト間で容易に感染するかどうかについて、現在は「推測ゲーム」の段階だと述べ、まだ断言はしていない。

「いまいましい事態が発生するまで、パンデミックが発生するかどうかはわかりません」とウェブスターは述べ、中国は世界で最大数のブタを抱えていると指摘している。「これでいいのか? 」は神のみぞ知る。

中国で、7年以上にわたる3万頭以上のブタの鼻腔の綿棒テストから、いくつかの種類から遺伝子が組換わった鳥類インフルエンザウィルスの増加が確認された
インフルエンザウイルスの複数の株が同じブタに感染すると、簡単に遺伝子組換えが起きる。これは「再集合」として知られたプロセスである。 国立科学アカデミーの議事録で本日発表された新たな研究によれば、G4と呼ばれるインフルエンザウイルスに焦点を当てている。

このウイルスは3つの系統がブレンドしたユニークな株である。1つはヨーロッパおよびアジアの鳥に見られる系統、2009年のパンデミックを引き起こしたH1N1系統、そして鳥、ヒト、ブタのインフルエンザウイルスの遺伝子を持つ北米のH1N1株である。G4はこの3つの遺伝子が組換えて出来たものである。

G4の亜種は特に懸念される。その中心は鳥インフルエンザウイルス由来であり、これには人間は免疫力がなく、ほんの少し哺乳動物の遺伝子がが混じっている。 病原菌を研究するシドニー大学の進化生物学者エドワード・ホームズは「明らかに、この状況は非常に注意深く監視する必要があります。」と言っている。


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