2019/06/30

遺伝子組換え食品を考える中部の会では、去る6/16に行なった中勢バイパス、嬉野新屋庄町と鈴鹿市『野町西』交差点の区間の調査で遺伝子組換えナタネが確認されたことから、その追跡調査を行いました。

今回多くのセイヨウナタネを確認できた区間は、関連会社すぐ横の嬉野新屋庄町ICから6.5kmの津市『半田東』交差点、さらに北へ約600mまで(『半田東』以北には東側路則に歩道がある)。

サンプルの採取は路側に歩道のある区間に限られるため、津市『半田東』交差点付近以外の区間では目視による確認のみとしました。

今回の調査で、セイヨウナタネの自生は、関連会社から『半田東』付近までの約7kmの道路西側に多いという傾向を確認しました。

現在、四日市港での積込みの際、エアーシャワーによる車体の洗浄をおこなっています。その効果について明確な判断はできませんが、セイヨウナタネの自生が減少傾向にあるのは、ナタネの輸送経路が中勢バイパスに移行しつつあるからかもしれません。

今後、嬉野新屋庄町の工場での荷降ろし直後の車体のエアー洗浄についても実施する必要があるかも知れません。

中勢バイパスは、伊勢市から愛知県豊橋市までの国道23号のうち、松阪市『小津町』から鈴鹿市『北玉垣町北』までの約40kmの自動車専用道路で、2020年2月の開通を予定。

このバイパスを利用すると、四日市港から松阪市の関連会社工場までを、津市街の最も混雑する区域を避けて走ることができます。その為、再三にわたって中勢バイパスを走らないよう、関連会社に申入れをしてきましたが、それに対する回答は「通っていない」とのことでした。
※表中、検体No.190616C01、190616C02、190616W07、190616W09 については、そのPCR検査を農民連食品分析センターに依頼したところ、表中の簡易検査と同様の結果が得られました
中勢バイパスは、市街地を避けた郊外を走るため、沿道には田畑が多い。したがって、トラックによるナタネ輸送の影響は計り知れません。また、歩道もほとんどなく、抜取り活動もできないため、深刻なGM汚染につながる恐れがあります。

中勢バイパスでのセイヨウナタネ自生は2016年春の中部の会の調査(こちらを参照)で、すでに確認されており、今回、6月16日、30日の二日間の調査でも多くのセイヨウナタネの自生を確認しました。

自動車専用道ではあるものの、部分的に歩道のある区間もあるため、津市の『半田東』交差点付近の同バイパスでセイヨウナタネを採取することができました。

二日間の調査で採種したセイヨウナタネ9検体に簡易検査を行った結果、6検体に、いずれもバスタ耐性を確認しました。
6/16 中勢バイパス/津市『久居相川町』付近の 090616W05 (LL陽性)
6/16『半田東』ガソリンスタンドのすぐ南 090616W07 (LL陽性)
6/30 『半田東』交差点の北 190630E01(GM陰性)
津市『半田東』交差点
6/30 190630E02(GM陰性)
6/30 190630E03(LL陽性)
6/30 簡易検査の結果
6/30 190630E04(LL陽性/東側にのみ歩道がある)
6/30 『半田東』交差点内の190630E05(LL陽性)
西側道路端に自生するセイヨウナタネ(いずれも無歩道のため撤去できない)


農水省の調査区域
(円内の国道23号と港内の
運搬車が通行する道路)
農水・環境省の調査区域
農水省で行なっている自生調査は、ナタネ輸入港の陸揚げ地点から半径5km以内で行なわれています。言うまでもなく、この区域(とくに四日市港)ではセイヨウナタネの荷役関連会社などにより、ほぼ完璧な駆除がなされています。調査の意味がないと思われます。

環境省で行っている調査は、その報告書の中で『輸送中に種子がこぼれ落ちることによる影響も含め評価がなされているが、実際にこぼれ落ちた種子により生物多様性影響が生ずるおそれがないことを確認するため』とされている。

環境省の調査は、その自生と交雑が広がっている道路の全域ではなく、内部川、鈴鹿川、雲出川など、一部の河川周辺と河川敷などに限定しています。

また同区域についても、我々市民や関連会社による駆除活動が行なわれているため「自生は広がらない」「環境に影響はない」という結果が得られることは明白です。

以上のように、両省の調査結果は、我々民間組織の継続的な駆除活動の成果により成立しています。我々による調査・駆除活動が行なわれなくなれば、GMナタネ汚染はますます深刻な状況になってしまうと思われます。さらに、それに連れ、両省の調査も打ち切られることとなり、GMナタネの自生状況すら把握できなくなってしまうでしょう。

環境省の調査区域(赤)

有機塩素系除草剤耐性ナタネも?
今、従来の有機リン系除草剤耐性に代わり、ベトナム戦争でも枯葉剤として使われた2,4-D(アリルオキシアルカノエート)、ジカンバなどの有機塩素系除草剤耐性のGM大豆、トウモロコシなどが、GM食品として厚労省の認可を受けています。今後、セイヨウナタネでもそのような品種が認可され、輸入されるようになることが予想されます。

ゲノム編集作物の流通
今まで、一部の遺伝子組換え食品で可能であった簡易検査による判定は、ゲノム編集食品の場合困難であるといわれています。今後、ゲノム編集作物・生物の生産・流通が行なわれるようになれば、その自生調査を行うすべもなく、まったくの放任による汚染拡散が起こることとなり、取り返しがつきません。

安全審査も行なわれず、登録制度も、さらに、食品への表示制度もままならないゲノム編集作物が起こしうるあらゆる影響について、大きな危機感を覚えざるを得ません。

現在、厚生労働省では、今夏からとなるかもしれないゲノム編集食品の流通を前に、届け出の受付を始めるとのことです。また『義務』ではなく『任意』のため、届け出なしで流通という可能性もあります。このように、届け出制度も、食品への表示制度も明文化されていない状況で流通をはじめてしまうことなど、まったくの暴挙としか言いようがありません。

食品としての安全性もさることながら、環境への安全性が確保されていないままでの流通はもってのほかです。

今後、我々の活動の意義が『無』に帰さぬよう、国に対する断固とした働きかけが必要な時ではないでしょうか。