モンサント:問題はグリフォサートではなく添加物だ!
F. William Engdahl
2017/08/30

悪名高く腐敗したモンサント社は、世界で最も大量に使用されている除草剤ラウンドアップで、グリホサートと組み合わされた秘密の添加物が非常に有毒である事を隠蔽していたことが暴露された。 世界保健機関のがん研究機構(IARC)は2015年3月に化学物質グリホサートが「ヒトに対する発がん性の疑い」と宣言したレポートを発表した(グループ2A)。この機関に対し、モンサントからはグリホサートに営業秘密の特殊な添加物を加えた場合の影響に関する情報は与えられていなかった。 モンサントはラウンドアップ除草剤の中の真の発がん物質を隠そうと必死だ。

グリホサートはモンサントの除草剤ラウンドアップの最大の構成成分で、モンサントのGMO作物の栽培では
使用が義務付けられている。 しかし、モンサントが開示を拒否しているのは、表面上はグリホサート除草剤の効果を高める「ターボ」と呼ばれる界面活性剤またはアジュバントと呼ばれる添加物に関する情報である。

2016年後半以来、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所はモンサントに対する訴訟を審理しており、この審理の中で、原告側はモンサントがテスト結果を偽造し、ラウンドアップとして販売されている実際の商品への添加物のテスト結果の開示を拒否したと主張している。 特にベストセラーのラウンドアップが非発がん性である事を示すために、グリホサートと組み合わせた場合、グリホサートよりもはるかに致命的な化学物質が混ざっている、実際に商品として売られているラウンドアップによる試験を拒否していると原告は主張している。
それは界面活性剤だ!
2017年6月30日、原告の弁護士であるBaum、Hedlund、Aristei 及びGoldmanの各弁護士は、モンサントに対する進行中のカリフォルニア州の訴訟で、モンサントが裁判所に提供したオンライン文書を公開した。 これらのモンサントの秘密文書により、ラウンドアップ除草剤に関する真実を隠蔽しようとする犯罪会社の陰謀が明らかになった。

モンサントの内部文書にあった、とんでもない電子メールの中に2003年11月22日付の機密マーク付きの電子メールの中には、当時モンサント社でグリフォサート製造責任者だったドンナ・R.ファーマー博士からのメールがある。 ファーマーのメールには「グリホサートとラウンドアップという用語を同じ意味で使用することは出来ません。グリホサートを使った除草剤すべてに「ラウンドアップ」の商品名を使用することは出来ません。 例えば、ラウンドアップは発がん性物質ではないと言ってはなりません…その声明に必要な製剤のテストを我々はは行っていません」とある。

ドンナ・R・ファーマーの2003年の承認から7年以上が経過した2010年12月14日付の別のモンサントの機密メールは、製剤の発がん性に関して「そのようなテストは直接行ってはいませんが、 これは、あなたがアフリカのブラックマンバ、世界最速の最も有毒なヘビ、一匹を持っていたと誰かに伝えるようなもので、結果的にあなたには何も起こらなかったから、ブラックマンバは家庭用ペット用として安全だと認定されます」とある。

モンサントの毒物学者ドンナ・R・ファーマーが「製剤」と呼んでいるのは、主要成分のグリホサートにさまざまな界面活性剤または補助剤を組み合わせたものであり、除草剤ラウンドアップを遺伝子組み換えトウモロコシまたは大豆の畑の雑草により効率的に付着させるためのものである。 モンサントはグリホサートと呼ばれるラウンドアップの主成分を「有効成分」と呼び、添加された他の化学物質は単に受動的または不活性で無害だ、と嘘をついている。

テストなし
米国やEUその他の世界の国々で、グリホサートに関する公開討論がこれまでに行われたのは、今日世界で最も広く販売され使用されている除草剤ラウンドアップという非常に毒性の強いカクテルから、ずる賢く人々の目をそらすためにモンサントが発表したのは「ニシン」だった。 ドンナ・R・ファーマーの電子メールが認めているように、ラウンドアップ除草剤に含まれているのはグリホサートだけではない。 モンサントは、あたかも有毒なカクテルの残渣が砂糖菓子に過ぎないかのように、意図的に公開論争と法的討論を、グリホサートのみに焦点を当てるようにした。 ホルムアルデヒド等の化学物質を含む企業秘密の添加物はありますか? 知りません。 N-エチル-NNGなどの既知の発がん物質が含まれていますか? 知りません。 このようにモンサントは公衆に話すことを拒否してきた。

モンサントの秘密の電子メール交換はカリフォルニア州地裁の裁判の結果、現在公開されており、グリホサート以外のラウンドアップの他の成分に関する情報をEPAが所有していないという事実を隠すための、米国環境保護庁(EPA)とモンサントの米国政府高官の共謀を劇的に明らかにしている。

これらの界面活性剤は殆どモンサントによって「企業秘密」に分類されており、生活環境における健康を守る米国政府機関である米国環境保護庁(EPA)にも知らされておらず、EPA当局もその事実を公開しなかった。
2017年6月30日にカリフォルニア州の訴訟で弁護士が発表したモンサントの機密メールの中には、2013年3月5日付のものがある。その中でモンサントは内部で次のように認めている。 「長期暴露は有効成分グリホサートを用いて実施された慢性および発がん性研究の規制要件に従い評価された」。催奇形性試験とは、薬物または化学物質にヒト胚または胎児の発育を妨げる可能性のある薬剤が含まれているかどうかを判定する試験である。 催奇形性物質は妊娠を停止させたり、先天性奇形や先天性欠損症を引き起こしたりする。

モンサントはそのウェブサイトで、政府の安全性試験基準への厳しい準拠状況を示している。 「すべての農薬と同様に、グリホサートは規制当局によって定期的に監視され、安全に使用できることを確認している。 米国では、それが環境保護庁(EPA)の仕事であり、世界中の他の規制当局と同様に、EPAのプロセスは包括的でかつ利用可能な最高の科学に基づいている」。

問題は「ラウンドアップ」ではなく「グリホサート」と言う言葉に注意が必要である。 カリフォルニアEPAとモンサントのメール交換で明らかになったように、モンサントはここでもずる賢く、ラウンドアップ除草剤に含まれる全ての添加物またはアジュバントに関わる詳細な情報提供に必要なデータを、過去40年間にわたって管理してこなかった。 奇妙なことに、彼らは「グリホサートに関する進行中のEPAの現在の「登録審査」の詳細についてはここをクリックしてください」と述べているが、2017年8月28日の時点でEPAの「登録審査」へのリンクはない。

一言でいえば、モンサントは所謂「有効成分」グリホサートの発がん性の可能性テストのみを行ったという詐欺を認めている。 商業的に使われている実際のラウンドアップ・カクテルのテスト結果を提出したことはない。 EUと米国EPA全体の「グリホサートの議論」はデマであり、悪意のある詐欺である。

グリホサート単独よりも「2千倍毒性が強い」
毒物学者による独立した科学的試験により、非常に有毒で発がん性の高い物質は、まさに添加物成分、いわゆる界面活性剤またはラウンドアップの「製剤」であり、これよりはるかに毒性の低いグリホサートと化学的に組み合わされていることが明らかになった。2016年2月26日にInternational Journal of Environmental Research and Public Healthに発表された査読付きの科学論文で、フランスのノルマンディーのカーン大学とAndrasSzekacsの生物学研究所のギレス・エリック・セラリーニ率いる毒物学者のチーム とハンガリー国立農業研究イノベーションセンターの農業環境研究所の所長は、モンサントのラウンドアップを含む最も一般的に使用されているグリホサートベースの除草剤をテストした。 彼らは、グリホサートと組み合わせて使用される共製剤および製剤を含む完全なカクテルをテストした。彼らが見つけたものは私たちの髪が抜けるような驚きの結果だった。 しかし実際は、モンサントの新しい所有者である巨大なドイツのバイエルAGをなだめることを熱望しているドイツ政府と米国政府とEUの委員会によってその成果は敷物の下で一掃されてしまった。

セラリーニ・グループの研究は、グリホサート系除草剤(GBH)による内分泌かく乱は、表示された有効成分グリホサートだけでなく、共製剤または添加剤にも起因する可能性があることを初めて実証したものだった。 しかし実際にはそれよりもはるかに悪くなることが分かった。セラリーニのグループは、ラウンドアップを含む世界で最も多く使用されている農薬である6つのグリホサートベースの除草剤(GBH)の共製剤の内分泌かく乱をテストした。

彼らの研究は「これらすべての化合物の内分泌かく乱作用は、毒性閾値を下回る濃度の性ホルモンのバランスをとる重要な酵素であるアロマターゼ活性で測定された。 アロマターゼ活性は共製剤のみによっても、製剤によっても、農業用に実際使われる希釈液の800分の1以下の濃度でも低下した。 一方、G(グリホサート)は農業用希釈液の1/3の濃度でのみ効果を発揮した…これらの結果は、グリフォサート単独では見られないグリフォサート・ベースの除草剤GBHによる多くの生体影響を説明できる。 さらに、彼らは現在、表示された有効成分のみの毒性試験から現在計算されているグリフォサート・ベースの除草剤GBHsによる曝露の許容1日摂取量(ADI)の値が妥当かどうかに挑戦している。

更に、グリホサートをベースとする配合除草剤は、開示されていない「製剤」または界面活性剤または共製剤を含め、グリホサート単独よりもはるかに毒性が強いと結論付けた。 彼らは「すべての共製剤および製剤は1%の農業用希釈液よりかなり低い濃度でも細胞毒性があった」と書いている。 この試験では、製品によりグリフォサートは添加剤との組み合わせ次第ではグリホサート単独よりも2000倍も細胞毒性が強いことが明らかになった。

しかし、モンサントは法律による規制のため、米国政府にも一般大衆にも企業秘密の添加剤が何かを明らかにしていない。

セラリーニらの研究は次のように結論付けている。「農薬製剤の公開された有効成分は、農業目的では単独で使われることはない。 物理化学的特性を変えたり、公開された有効成分の浸透性または安定性を改善するために他の物質(共製剤)が添加されることもある。 不活性であると宣言された共製剤が何かは、一般的に秘密にされている。 さらに、それらは許容可能な1日摂取量を確立するための哺乳類に対する農薬の中長期毒性試験では使用されていない」

1945年以降の戦争犯罪法廷の基準により、モンサント社はラウンドアップ総製剤製品はグリホサート単独よりも毒性が強く、ラウンドアップ単独の信頼性の高い安全性試験と、ラウンドアップへの全ての添加剤、所謂「不活性」成分に関する情報の完全な開示が必要なことを知っていた、あるいは知るべき立場にあった。

カリフォルニア州における訴訟の法的結果がどうであれ、Baum、Hedlund、Aristei及びGoldmanの原告とその弁護士は、モンサントの機密文書を公開することで人類に大きな貢献をした。

弁護士は、これまでにすべての文書のコピーをEPA検査局長官に送付し、現在EPAとモンサントの間に違法な共謀があったかどうかを調査中である。即ち、 カリフォルニア州環境健康危害評価局(OEHHA)は最近、カリフォルニア州で癌を引き起こすことが知られている物質としてグリホサートをリストアップし、グリホサートに安全な港を与えるべきかどうかについてBaum 、Hedlundや他の人からコメントを求めている。 そして欧州議会議員は、最近MDL訴訟を監督する裁判官に書簡を送り、欧州で販売するグリホサートの登録を更新すべきかどうかをEUが検討する際に必要な書類を要求した。

●この文の著者F. William Engdahlは戦略的リスクコンサルタントおよび講師として、プリンストン大学で政治学の学位を取得し、オンラインマガジン「New Eastern Outlook」専属の石油および地政学に関するベストセラー作家。