GMナタネ自生調査全国報告集会 in 名古屋
08/07/12-13

『遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン』の呼びかけで行われている『GMナタネ自生調査全国集会』は今年で4回目となりました。今回の集会ははじめての試みとして名古屋での開催ということになりました。GMナタネによる汚染が広範囲にわたって確認されている、四日市港と名古屋港周辺で調査・抜取り活動をしている『遺伝子組み換え食品を考える中部の会』も『遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン』と合同するかたちで主催させていただきました。この集会をきっかけに中部でのGMナタネ自生の現状を知っていただき、さらに解決への糸口を探ろうというものです。

今回の集会は2日間にわたって行われ、1日目の7/12ではGMナタネ自生調査の報告会、7/13では現地国道23号線に場所をかえてのGMナタネ調査と抜取り作業(抜取隊)という濃い内容となっています。
賛同団体
くらしを耕す会/食と環境の未来ネット中部よつ葉会/栄町大豆畑トラスト/全日農/流域自給をつくる大豆畑トラスト/わっぱの会/愛媛有機農業研究会/愛媛有機農産生協/株式会社よつ葉デリバリー京滋/食生活改善普及会/生活協同組合コープ自然派こうち/遺伝子組み換え食品を考える中部の会/株式会社名古屋生活クラブ/大磯消費者の会/聖コロンバン会/NPO法人日本消費者連盟/グリーンコープ共同体/生活クラブ連合会/生協連合会きらり/大地を守る会(順不同)


第1日目『GMナタネ自生調査報告会』

定員200名の会場は追加の椅子も足らず立席も
GM作物の現状を語る天笠氏


7/12プログラム
13:00開会挨拶小野南海子(遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン)
13:05
講 演
『ドイツブレーメン大学GM問題会議に参加して』
河田昌東 (四日市大学)
『遺伝子組み換え技術の問題点』
金川貴博(京都学園大学)
14:15GMナタネ自生報告


『2008年全体報告』
天笠啓祐(遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン)
各団体報告
遺伝子組み換え食品を考える中部の会
石川豊久

生活クラブ生協
赤堀ひろ子

グリーンコープ
杉尾紀美子

きらり
大沼和世

大地を守る会

農民連食品分析センター
八田純人

京都学園大学ナタネ調査隊

08年全国調査の結果
15:20GM作物の現状報告


『オーストラリアにおけるGMナタネ栽培阻止の取り組み』
纐纈美千世(遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン)
『カルタヘナ議定書締約国会議とNGO会議報告』
清水亮子(市民センター政策機構)
『生物多様性条約締約国会議報告』
石原紀彦(生物多様性フォーラム)
『GM作物の現状』
山川 剛(東京新聞)
『GM作物の現状』
天笠啓介(遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン)
『GMトウモロコシ検査についての要請』
入沢牧子(種子ネット)
16:15アピール採択 西分千秋(遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン)
16:25閉会挨拶小川洋治(遺伝子組み換え食品を考える中部の会)



今回の報告会は通産4回目ということもあり、全国約30都道府県で行われたナタネ調査の精度は大きくレベルを上げています。そのため、データとしても信頼性があり、地方・中央の行政機関に対しても影響力のある『GMナタネ自生調査全国報告集会』といえるでしょう。この運動の意義はなんといってもそれが全国規模で行われている点です。GM汚染が起こっていることがわかっている地域のみならず、あらゆる可能性を考慮すれば、このような広範囲での監視活動は大きな意義をもっています。

ただ『広範囲』とはいっても
『広範囲』とはいえ、昨年までは全国のナタネを無作為に採取して検査するという方法ではなく、今年は油脂や飼料・肥料などを扱う会社を目標にした調査を中心に行っています。そのため、昨年よりも採取された検体の数は少なくなったものの、そのうちのGM検出率が高まる結果となっています。

GM汚染はナタネばかりではない
遺伝子組み換え食品を考える中部の会の調査からも浮上してきている問題ですが、GM汚染は食品用ばかりで起こっているわけではありません。工業用、飼料用、肥料用もさることながら、農作物の種子としても流通されている『種子』のなかにもGM汚染の可能性があるということです。

たとえば食用として輸入された菜種や綿実などが輸送途中の悪条件のため変質してしまった場合、工業用の油に利用されたりします。この場合通常の輸送経路とはまったく異なった方向に運ばれる。輸入される牧草(GMアルファルファなど)にしても、それに種子も混入していて(牧場の周辺では見慣れない雑草が生えていることが多い)、GM作物が環境に放出されてしまう可能性があったりします。またトウモロコシなども飼料用ばかりでなく、食品用の種子(ほとんどが輸入)もGM汚染の可能性があるのです。

種子ネット・入沢牧子さんから提案がありましたが、今後の監視活動では、たとえば生協などで流通する農産物の種子にも監視の目を光らせることも必要になってくるのかもしれません。


なぜGM作物がいけないのか
現在驚くほど多くのGM農産物が輸入されているにもかかわらず、日本国内では遺伝子組み換え作物の商業目的での栽培は行われていません。この事実はとりもなおさず、大多数の日本人がGM食品を望んでいないことの証しといえましょう。

GM食品についての安全性について問題点も多く指摘されており、その論議もなされなければならないのも事実です。しかしGM農産物の日本の農業、さらには自然環境に及ぼすであろう大きな影響、不利益を見過ごすことはできません。

現在食糧自給率40%を割り込んでしまっている日本の現状があります。これを食の安全の脅威という問題だけで片付けることは大きな間違いではないでしょうか。

自然環境がはぐくむ生物の多様性
日本における『自然環境』とはなんでしょう。それは水田稲作を中心にした、古来からの農業という営みによってはぐくまれてきた里山の環境ではないでしょうか。それは水田や畑であり、そこにはかつて多様な生物が自然の循環を司っていたはずです。また豊かに管理された森林からは貴重な水も供給されていました。そんな環境が過去60年の間に破壊され続けてきました。それを象徴するものとして食糧自給率の低下があるのです。

輸入食品のうち、とりわけGM作物が何時の日か日本の田や畑で作付されるような未来を想定したとき、そこでは生物の多様性やそれぞれの地方に伝わってきた食農文化はますます失われ、農産物は大国の知的特許で支配されてしまうことになるのかもしれません。果たしてそれが私たちの、日本人の原風景、自然環境と呼べるのでしょうか。

環境の危機はもはや地球規模で起こりつつあります。今、私たちにできることは、私たちが生活している地域の、農を基盤とした自然環境をまずは守ってゆくことにほかありません。

GM作物の日本の自然環境への侵入は大きな脅威です。GM作物の国内栽培禁止は言うに及ばず、その放逸による自生拡散の防止を強く訴えます。