R23北玉垣町より河芸町を重点とした
2007/03/07

遺伝子組み換えナタネの調査・抜取

先回2006年11月の『GMナタネ抜取隊』以来3ヶ月間、日本有機農業研究会愛知県大会のサポートで多忙を極めてしまい、国道23号線のセイヨウナタネの抜取作業をしませんでした。3/10の有農研大会を前に3/7、遺伝子組み換え食品を考える中部の会では12名と少人数ながらGMナタネの調査・抜取隊を行いました。

今回重点的に抜取をしたのは、北玉垣町から河芸町までの約10Kmの区間。そして内部川河川敷、河芸町東千里の近鉄沿線など、今まで特に目立った地点。そのほかに自動車で走行中目に付いた箇所。今まで調査対象にしていなかった、三重大学南江戸橋から23号を迂回する県道114号沿線も走行してみました。

先回の抜取隊ではオフシーズンながら、40Kg以上のセイヨウナタネを撤去しました。本来なら最低月1回くらいのペースで行わなければ意味のない作業。すでに3ヶ月も間を空けてしまっている。さらに時も早春ということもあり、不安を抱えながらの抜取隊でした。

その結果、今回もかなりの高確率で除草剤ラウンドアップとバスタ耐性の2種類のGMナタネの自生を確認したものの、以外にも、例年とは違う状況が確認され、私たちの活動にも希望の一面が見られました。
以外な状況を目の当たりに
例年ならこの時期、野生のナタネやセイヨウカラシナ、さらにはこぼれ落ちのセイヨウナタネで花盛りの国道23号線一帯。そんな季節の中、現地を訪れた私たちの心配は以外にも拭い去られたのでした。四日市港第2埠頭でも関係者による徹底的な除草作業の結果からか、問題となるようなセイヨウナタネの自生は見られませんでした。埠頭から国道23号に至る国道164号線でも、セイヨウナタネの目立った自生は見られませんでした。ただし国道23号沿線の中央分離帯では相変わらずセイヨウナタネが点々と自生しているのが確認されました。この部分の抜取り作業は、市民レベルでの行動では危険が伴うため行えません。何らかの措置が望まれるところです。

内部川の河川敷では
昨年、一昨年の春、私たちが内部川に架かる塩浜大橋下の河川敷を訪れたときには、一面セイヨウカラシナの見事な花畑が広がっていました。その中にセイヨウナタネの自生が確認され、自然界での交雑はこういう場所で起こるのかもしれないと懸念したものです。

しかしながら、おどろいたことに内部川河川敷は、今回すでに一帯の除草作業が完了されていたのです。昨年11月、この場所を管理する国土交通省の三重河川国道事務所に対し、春のカラシナ開花前の除草を依頼しました。しかしながら回答は「草刈除草は晩秋の火災防止のための1回に限る」というもの。経費が削減されている中、春の除草は無理とのことでした。そんな回答にもかかわらず今回の措置は、セイヨウナタネとカラシナの交雑を防ぐ意味で大変意義深いものであったと確信します。
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河田氏の抱える株はその茎なんと5.5cmの太さ
それととくに記しておかなければならないことがあります。それは関連製油会社の努力です。四日市市在住の『抜取隊』メンバーによれば、この日、私たち中部の会の作業に先立って、すでに関連製油会社により抜取作業が行われていることがわかりました。後日、関連製油会社に確認したところ、かなりの頻度で作業をしてみえるとのこと。

地域での清掃作業の一環として、会社独自の活動として抜取をしていただいているという事実に一同感服し、頭の下がる思いです。
また四日市港でも、関連の荷役会社による、これまた徹底した駆除作業の状況を目の当たりにしました。私たち中部の会だけでは到底なしえないこの活動が、少なくとも快方に向かっているのかもしれないという希望的観測に繋げられています。

これには『安全』が確認されているGM作物ながら、自然界に放出されることで起こりうる影響を憂慮する国の関与もあるのかもしれません。しかしながら、にもかかわらず、私たちの活動が何らかの原動に繋がっているとすれば、地道ながら今までどおりの活動の継続を決意する次第です。

たわわに種を抱え込んだセイヨウナタネ
先回の『抜取り隊』で実行できなかった箇所に、近鉄磯山・千里駅間の鉄道敷地内のセイヨウナタネの群落がありました。ここはR23と接近しており、輸送途中でこぼれ落ちたナタネ種子が自生したと思われます。しかも年を重ねて大きな群落となっていました。鉄道の敷地内ということで危険も伴いましたが、それを野放しにしておくわけにゆかず、思い切ってすべて撤去しました。その中には茎の直径5.5cmに及ぶものもあり、あらためてセイヨウナタネの雑草性に驚かされました。この地点については、かなりの世代交代のための種子が放出されているため、ここしばらくの追跡調査が必要です。

今回の調査から
一見して私たち『遺伝子組み換え食品を考える中部の会』や関連会社などの努力が実を結んでいるかのような実感もします。しかしながら、反面セイヨウナタネの固体減少の影には、なんとなくその背後に大きな力がはたらいているのかもしれないという予感がしてしまうのはぼくだけでしょうか。


昨年、茨城県鹿島港でのセイヨウナタネの減少の事実が農水省のHPで紹介されました。そこではセイヨウナタネの世代交代による拡散の可能性が否定されており、セイヨウナタネの抑制が関連会社や市民レベルによる努力の結果であるという行(くだり)は一箇所もありませんでした。

もしかすると、この夏までになされるであろう農水省のHPでの発表で『四日市周辺でのセイヨウナタネも減少の一途』という表現で済まされ、GMナタネが生育域を拡大している状況はみられない、という結論に結びつけられてしまうのかもしれません。それには「無礼千万」といわざるをえませんが、せめて07年3/15の今日、以上のような記述がここになされていたという事実をここに明記しておきます(注)。
詳しい検査結果

詳しい検査結果

今回の『遺伝子組み換え食品を考える中部の会』による調査で確認できたこと、それは国にとってもセイヨウナタネのこぼれ落ち自生と拡散は、ぜひとも防がなければならない問題であることの『証(あかし)』ではないでしょうか。どこかに官民の見えざる『正』のつながりがあるとすれば、それにかすかな期待を抱きつつ、地道な活動を続けてゆくべきなのだとあらためて確信します。

今回の調査の結果から
22箇所、28グループ96検体のうち、12のグループでラウンドアップ耐性、14グループでバスタ耐性のGMナタネを確認しました。うち4グループで両方の形質のものが混在していることがわかりました。これはあくまでも検査の結果で、実際の確率とは無関係です。

ただし、過去のデータから判断すると、昨年11/25の抜取り隊と今回では、それより過去においてのラウンドアップ耐性GMナタネの高確率性に対し、バスタ耐性GMナタネの確率が逆転して高くなっている点が気になります。今のところ、このデータについては判断しかねるところですが、とりあえず今後の調査の結果に注目してゆきたいと考えます。

(注):農林水産省HPを参照(06年7月発表)