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乙11。 第2期科学技術基本計画
債務者は、その立証趣旨を、《本実験が国家戦略として重要性を持つこと》と主張する。
しかし、この基本計画は、バイオテクノロジーの具体的なことにあれこれ言及しているが、肝心の遺伝子組換え作物の推進については一言も言及していない。
否、正確には、1箇所だけ言及している。それが以下のくだりである。
《21世紀を中長期的に見れば、生命科学の発展に伴って生ずる人間の尊厳に関わる生命倫理の問題、遺伝子組換食品の安全性や、情報格差、さらに環境問題等、科学技術が人間と社会に与える影響はますます広く深くなることが予想される。こうした状況に先見性をもって対応するために、科学技術が社会に与える影響を解析、評価し、対応していく新しい科学技術の領域を拓いていく必要がある。このためには、自然科学のみならず人文・社会科学を総合した人類の英知が求められることを認識すべきである。》(疎甲50) |
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乙12。バイオテクノロジー戦略大綱
債務者は、その立証趣旨を、《本実験が国家戦略として重要であること》と主張する。
確かに、この戦略大綱で、債務者が指摘するように遺伝子組換え作物に言及しているが、しかし、債務者が指摘しない箇所で、この戦略大綱は次のように宣言する。
《【食料分野(よりよく食べる)】
@ 消費者の健康を最優先に、食品安全委員会(仮称)を設立する等食品の安全に関する組織の大幅な拡充を図るなど、食品の安全対策を大幅に強化します。》(疎甲51)
《【環境・エネルギー分野(よりよく暮らす)】
@ 遺伝子改変生物の生物多様性の保全や環境への悪影響を防止します。》(同上) |
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乙13。有機農業に関する基礎基準2000
債務者は、その立証趣旨を、《遺伝子組換えに反対の立場を取るグループですら、遺伝子組換え技術を用いることを許容していること‥‥》と主張する。
これが事実の歪曲にほかならないことは、この主張を知った乙13の作成者「日本有機農業研究会」が、下記の理由により、7月19日、債務者代理人宛てに、抗議と書証の撤回を求める抗議文を送ったことからも明らかである(疎甲52)。
記
「基礎基準2000」は、<考え方>と<基準>から構成されており、遺伝子組換え技術を使わないことについては、まず<考え方>において、「遺伝子組換え技術により育成された品種の種子・種苗、作物体及び収穫物並びにそれらに由来する生産物は、使用してはならない」とはっきりと禁止している。それを受けて、<基準> でも「使用しないこと」を明記している。
ただし、一般には、家畜・家禽の配合飼料では、輸入原料を避けるのが困難であり、家畜糞尿を堆肥に利用する場合や油カスをはじめとする肥料も、その原材料の多くが北米からの遺伝子組換え作物体になってしまっている現状があるため、本会の基礎基準の<基準>においては、当面のあいだJAS規格と同程度にするのが実際的であるとの判断から、「ただし、組換えDNA技術により育成された品種の作物体及び収穫物並びにそれらに由来する生産物に該当しないものを入手することが困難な場合にあっては、それらに該当する作物体、収穫物及び生産物を最小限度において一定の期間を限って使用することができる。」とした。
にもかかわらず、債務者が全体の基準の構成と文脈から切り離して一部だけを取り出し、本来の趣旨とは反対の意味に故意に解釈して利用することは本会の理念を侮辱するものである。 |
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乙38〜103。研究者の要請書
殆どが定型文書への署名であり、なかには誤字が訂正されていないものもあり(疎乙39.40.41.42.44。45‥‥)、果してどこまで本野外実験の内容や問題点を理解し、署名したのか甚だ疑問と言わざるを得ない。 |